いじめをかばって自分がいじめに
前回、目の前で「いじめ」が起こっている時に、周囲にいる誰かが被害者をかばって止めに入ることは、子どもたちにとってハードルが高すぎるというお話をしました。そこで今回は、「いじめ」を受けていた友だちをかばう行動に出て、逆に自分が「いじめ」の対象になってしまったAさんの事例を取り上げます。
元々は仲良しだったAさん、Bさん、Cさん。ある時、BさんがCさんを「ダサい」「一緒にいるのが恥ずかしい」などと言ったことに対し、AさんはCさんをかばってBさんを批判しました。これをきっかけに、BさんはAさんを無視するようになりました。
Bさんは新しい仲間のDさん、Eさんと一緒に、Aさんを「ダサい」「キモイ」などと言うようになります。AさんがかばったCさんも、それを見て笑っている様子。Aさんは居場所を失い、学校に行きたくないと思うようになります。
Aさんと同じクラスのXさんは、1人でぽつんと教室にいるAさんに気付き、そのことをYさんに話しました。Yさんは、AさんがBさんたちから「ダサい」「キモイ」などと言われていることをXさんに教えてくれました。
「Bさんたちのしていることは(Aさんへの)いじめでは? 注意したほうがいいよね?」(Xさん)
「AさんがBさんに何かひどいことを言ったらしいよ。だから、いじめって決めつけてBさんたちを責めるのは良くないと思うの。Aさんて、ちょっと正義感が強すぎるところがあるじゃない?頑固っていうか。私は“中立”でいたいから、何もしないことにするよ」(Yさん)
(出所)『教師もできるいじめ予防授業』より要約・一部改変
この事例には、これまで学んできた「いじめ」の「定義」や「構造」に関わる論点が含まれていますから、実際の授業ではこれらを復習することから始めます。ただし、ここでは新しいテーマである「中立」についてのみ取り上げたいと思います。