変わる算数・数学の学習過程
――今年1月に行われた第2回大学入学共通テストの数学の問題を見ると、これから小、中、高での学びが変化していくことが如実に示されていたと思います。
石田 ちまたでは、共通テストについてのコメントはさまざまになされていますが、どうも表面的な所を見ただけで判断しているのではないか、というものが多い気がします。実際に問題を解き、分析をする中で見えてくるものがあります。数学の問題というと、どうしても一般の方にとってはとっつきにくい内容になってしまうのですが、これまで2回にわたって少々専門的な内容にまで踏み込んでご紹介させていただいたのは、このような理由からです。
その中で度々指摘してきたように、2回目となる今回の出題は、大学入試改革の検討過程で重ねて議論されてきた方向性がはっきり出たものだと考えられます。この方向性を示したものとして、教育関係者の間では「グルグルの図」と呼ばれている図1があります。ここには、今後の算数・数学の学習過程のイメージが示されています。
ここで示されているのは、「何のために数学を学ぶのか」という根源的な問いだと私は思っています。そのことが今回の共通テストでも問われたわけです。
――真ん中の流れが、左右に分かれて回り、元の「数学的に表現した問題」に戻ってくるわけですね。
石田 これがグルグルの図と呼ばれているのは、図の中で数学的な活動が、左側でグルっと回り、右側でもグルッと回るからです。お子さんをお持ちの皆さんが普通に思い浮かべる「算数・数学の問題」というのは、図1の真ん中の部分です。「数学的に表現した問題」とは、教科書や問題集に載っている定型的な問題と考えてもらえばよいでしょう。
そこから、算数で言えば「○○算」の形、数学で言えば「方程式」を取り出すのが、「焦点化した問題」に向かう矢印Bの部分です。知識や解法を使って「結果」を導き出す矢印Cの部分が、パターン通りの処理になります。このような流れが、多くの方が持っている「算数・数学の問題」を解くことだと思います。
しかし、共通テストでは、この真ん中の流れに至る「前」の部分が問われているのです。図の左側「現実の世界」は、「日常生活や社会の事象」から数学的な事象を取り出すという観点からの問い掛けです。「数学の問題にたどり着くまでが長い」という感想が共通テストで出ているのは、この青い矢印(D1、A1)の部分が「長い」と言っているからですね。
現実の世界では、実際に起こっていることがらを数理的に捉え、数学的に処理し、問題を解決することが求められます。従来のいわゆる「算数・数学」にたどり着くまでの部分も、この図では「数学的活動」だと捉えており、その部分に対応する力を、数学を通じて身に付けるべきだと考えているのです。