図3 「過程をしっかりたどる力」が問われる駒場東邦(2022年大問3)
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過程をしっかりたどる力

石田 今年の駒場東邦の問題は、どれも本格的で非常に難問ぞろいでした。以前、大問1(3)の解法について取り上げた記事がありますが、ここでは図3の大問3を取り上げたいと思います。この学校は、数学的な背景を持った問題を算数の問題として出題してくる傾向があるように思います。

 まずは、問題文の提示している状況の理解ができるかどうかが初めの壁になります。具体例をもとに「そのとき到達した整数からその数だけ時計回りに進みます」という文の意味を理解することが必要です。「2」という整数に到達したら次は2進み、「3」に到達したら3進む、ということですね。

――具体例を参照しながら、ルールを読解していくわけですね。

石田 そして「1からAまでの整数」が並べられ、このルールにしたがって1から出発した時に、「2からAまでのすべての整数にちょうど一度ずつ到達することができる」ようにする、というのが条件です。小問(1)ではA=6の時、つまり1から6までの整数を円形に並べた時に条件を満たす並び方が聞かれています。

――これをやみくもに並べて解くのは大変そうです。

石田 はい。実は先ほどの渋幕の問題と同じように、問題文の中に重要なヒントが与えられています。でも、あまり明示的でないので、これに気が付く受験生が少なかったかもしれません。(1)ではまず、「最後に到達する整数はいくつですか」が聞かれ、次に「このとき1の真向かいに並んでいる整数はいくつですか」が聞かれています。そして最後に、「このような並べ方をひとつ書きなさい」と聞かれています。この問いの並びは、1つの問題の答えを次の問題の解決の手がかりとして振り返ることができるような力を問うているのだと考えられます。

――教室で先生の指示をちゃんと聞くことができるか、ということなのでしょうか。

石田 どうしても受験の算数では、答えを出す事が最優先となってしまい、答えが合っていればいい、となりがちです。これは、中学以降の数学を教える先生方が最も嫌う態度の一つです。数学は、結果よりも過程が大切だからです。

 これは東大がホームページ上で公開しているアドミッションポリシーの中で、高校生に求める数学の中身としても言及されています。数学で要求されるような「過程をしっかりたどる力」が、今後の学問や仕事で求められる力につながるのです。そういうことを出題者側は考えていると思います。

――それが数学を学ぶことの大切さ、ということなのですね。