2月の一般選抜入試は「敗者復活戦」

――少子化で、21年度に比べて22年度の18歳人口は2万人減っているので、全般的に緩和傾向にあるかと思います。

中根正義(なかね・まさよし)
芝浦工業大学柏中学校高等学校校長、毎日新聞社客員編集委員。1963年岐阜生まれ。千葉大学教育学部卒業後、毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部で大学合格ランキング特集に長く関わり、教育事業本部大学センター長など教育部門を担当、編集編成局編集委員も兼ねるなど、35年間の在職期間中、約20年間は教育関連の特集や記事の編集、取材に携わり、そのうちの12年間はサン毎編集部で過ごした。2020年から学校法人芝浦工業大学評議員、21年から実践女子大学学長特別補佐も担い、22年4月より現職に。

中根 大学によっては、英検準1級を持っていると、英語の入試が満点換算されるので、そういう受験生は楽になりますよね。そういう大学を狙うよう進路指導をしている高校も増えてきています。

後藤 東京の私立中堅高校では、今年度、合格実績が結構上がっています。これは先生方の指導の結果というよりも、少子化の影響が大きいと思います。だから、先生方がいままでの調子で大きな負荷をかけて勉強させようとしても、生徒は付いていかないでしょう。少子化で選抜が緩くなっていることを生徒は高校入試で十分に知っていますからね。

中根 MARCHクラスでも、今年度は年内合格の枠を広げています。

後藤 これはつまり、指定校の推薦枠が取れなかったり、総合型選抜も落ちたりした受験生にとって、2月の一般選抜入試というのが敗者復活戦になってきているということです。

 私立大でいうと、早慶の滑り止めにならない日東駒専とその上あたりがこれからは構造的に苦しくなっていくと思います。

中根 18歳人口は、23年度に前年度比で4万人減り、約110万人になります。そうした大学は、これから苦しくなります。

後藤 だから、昨年度もそうでしたが、2月の受験生は強気で臨んだ方がいい。

中根  自分が学びたいことや、この大学のこの先生に学びたいというものが明確にあるのならば、年内入試で決めた方がいいと思います。

後藤 年内入試の方が楽なことは分かったし、そこはズブズブの状況にあることも知られてきたわけで、どんなルートで入ろうが、何番で受かろうが、大学に入学したら一緒ですから。

中根 この2年間で、年明けの一般選抜(一般入試)の性格が完全に変わったといっていいと思います。23年度はさらに、この変化が強まります。

 ただ、気をつけないといけないのは、ミスマッチを起こしている生徒がいることですね。とにかく早く進路を決めたくて、指定校推薦で、行きたくない大学に行ってしまう。

後藤 進路指導が強すぎて、「お前、ここの指定校に行け」となるとまずいですよね。上位大学の指定校枠を確保したくて、成績が良い生徒にそんな指導をしてしまうケースもあります。文系の生徒に東京理科大に指定校推薦で行かせちゃって、入学後に大学も本人も困っちゃったんです。結局、その学生は退学して他大学に行ったそうです。

中根 そうした本末転倒を防ぐためにも、目的意識をしっかりと持たないといけないでしょうね。

 今年ですと、大学に通いながら受験する仮面浪人が約4万人いたのではないかと思われます。1月の共通テストでの不正事件は、通っていた大学に不本意入学をしていた学生が、共通テストを受け直して起こした事件でした。ですから、絶対に安易に志望校を選ぶなということです。

 これからの受験生の親は、就職氷河期の世代になっていきます。この世代は大学入試も大変だった上に、就職も大変だったという世代です。なので、子どもにあんな思いはさせたくないからと、大学だったらどこでもいいからとにかく早く決めてくれとなりかねません。大学入試も就職も、実態は大きく変わっているのに、です。

後藤 そこでミスマッチが生じるわけですね。