大学入試改革で問われるようになったこと

――2021年に最初の大学入学共通テストが実施され、22年度からは高校で新しい学習指導要領が導入されています。

石川一郎
石川一郎(いしかわ・いちろう)
カリキュラムアドバイザー(聖ドミニコ学園星の杜中高など)。21世紀型教育機構理事。1962年東京生まれ。早稲田大学教育学部社会学科地理歴史専修卒業。社会科(日本史)教員として、暁星国際学園、ロサンゼルスインターナショナルスクールなどで教える。かえつ有明中学・高等学校元校長。香里ヌヴェール学院元学院長。著書に『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)、『2020年からの教師問題』(ベスト新書)、『2020年からの新しい学力』(SB新書)、『いま知らないと後悔する 2024年の大学入試改革』(青春新書インテリジェンス)、『先生、この「問題」教えられますか?』(洋泉社)、共著に『学校の大問題』(SB新書)など。

後藤 大学入試改革については、共通テストの数学、国語で記述式を導入できず、文部科学省内にも頓挫感がありました。しかし、課題解決型の出題方針に変更はないことを学校はきちんと生徒に伝えないといけません。そうしないと、今年の大学入学共通テストの数学IAIIBで起きた「どひゃん」が、いずれまた起きるからです。

 共通テストの理社(理科、地理歴史・公民)の出題傾向を見ると、理科の物理や化学は元々知識活用型の科目であり、生物や地理でもすでにその対応をしています。

 共通テストの試行調査以来、何も変わっていないのが世界史と日本史です。いずれも英国地歴3教科の私立大文系入試には欠かせない科目です。新しい学習指導要領を本格実施した25年度からの入試では、ここでも「どひゃん」となる可能性はあります。石川さんは日本史の先生でしたね。

石川 日本史とか、地理を主に教えていました。歴史小説とかを読むのが好きで、人の生き方や社会課題のようなものが反映されている日本史は、とても面白い科目だと思っていました。

 ところが、実際に教えるようになると、「試験に出るのですか」みたいに、生徒は模試や大学入試にしか反応しない。脱線して話しだすと、少しは別の反応も出てきますが…。自分の教えたいものが出てきたと感じたのは、現場の教員を終える頃でした。

後藤 ようやく時代が追いついてきた。

石川 自分の経験を振り返ってみると、現場の教員は、20代には自分の教科を全部教えるトレーニングを2~3回することで、自分の授業ノートができあがっていきます。

 これが30歳くらいになると、点数を取らせるために、だんだん模試アジャストになっていく(笑)。高2・高3生を受け持つのは、そういう能力を評価された先生方なので、これから先、歴史でも「どひゃん」が起きることになるのだろうなと思います。

 教員同士のあつれきもあって、見識はあっても受験対応はやりたくない、いろいろなことを研究しているような先生は、高1や中学に回されるという教員のすみ分けもあります。

後藤 そういった教員に教わる方が生徒は幸せですよ。模試にアジャストする傾向は、ここ30年間の話ですよね。受験生は過去問を懸命に解き、模擬試験も受けています。ところが、文科省の出題方針が変わっているのに、模試がいままで通りの方針で出題していると、模試もまた間違えているということです。

――25年には教科「情報」も共通テストに出てきます。

後藤 「情報」は初めてですし、試行調査に加えて、模試でそれらしいものが事前に出てくるはずなので、それは模試をちゃんと見ておいた方がいいです。出題方針を理解しているかどうかを含めて。