”お嬢様女子大”の明日はどっちだ?

 Cグループは、いずれも母体がカトリックで、付属中・高を持つという共通点がある。東京にある“お嬢様女子大”として、バブル経済の頃には特に人気を得ていたイニシャルSの三つの大学である。大手企業の一般職として採用され、総合職の男子社員と結婚して“寿退社”もしくは実家の“家事手伝い”という肩書で“永久就職”に備えるという選択は、昭和の時代にはよく見かけた。

 その後、男女雇用機会均等法(1985年)や労働者派遣法改正(1996年)により派遣社員が増加していく過程で、女子学生も経済的な自立を求められるようになった。

 3大学とも偏差値は50に達せず、全体的に「52.5の壁」よりも下に位置しており、 “手に資格”を意識せざるを得ない状況に置かれている。学部・学科の構成にも問題がある。いずれも文学部かリベラルアーツ系学部で、実学系の学びが期待できない。

 これからの時代をにらみ、女性が社会で活躍することを後押しするような学部が必要だろう。例えば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やデジタル社会の到来に対応する学部、リベラルアーツであったとしても教養を蓄えるのではなく思考の方法を学び社会課題解決を図る学部などだ。

“実家の太い”ホンモノのお嬢様でもない限り、一般の学生向けに学部・学科の構成を「出口」である就職の実情に合わせてアップデートしていけるかで、“お嬢様女子大”の明日は大きく左右されそうだ。

 このグループの3大学に限らないが、先行きが分かれそうな兆候として、どのような選抜方式で入学者が決まっているのかという視点が重要となりそうだ。2月の一般選抜での合格者が入学者に占める割合(2023年・大学通信調べ)についても、判明している分だけだが、以下に見てみよう。

 同じAグループでも、付属校のある日本女子大は一般選抜が51%にとどまっている。付属校のない東京女子大は一般選抜が65.7%を占めている。津田塾大は合格者数に占める一般選抜のデータがあるのだが、それは92%と極めて高い。Bグループは昭和女子大が69.5%と高く、他の大学は総合型選抜や学校推薦型選抜による部分が大きいものとみられる。

 大きく分かれたのがCグループで、清泉女子大の70.3%に対して、白百合女子大はその半分に満たない31.1%となっている。偏差値40台のこうした女子大では、一般選抜で受験生が集まらない傾向が強いため、非一般選抜でとにかく早めに学生を確保しようという動きが顕著に見られる場合がある。清泉女子大も定員を割っている。

 その点、聖心女子大のように全国に系列の中高一貫校を持ち、そこから一定数の学生を毎年確保できることは大いに強みである。東京の港区にある付属校は、中学入試をやめて小中高12年一貫教育に切り替えている。進学校化が進む清泉女子大の系列校は鎌倉市にあるが、神奈川の午後入試が多い中堅校として中学受験で人気を得ている。

 ところが白百合女子大は、千代田区にある付属校が上位の中高一貫進学校であり、系列の大学には事実上進んでこない。白百合女子大の文学部は国語国文・仏語仏文・英語英文という女子大としては王道の文学・語学の学科で構成され、人間総合学部は児童心理・発達心理・初等教育で小学校教員を目指すことができる。

 収容定員充足率(22年5月現在)が98%と定員割れしているが、問題は475人の入学定員に対して、入学者数が20年度488人から21年度477人、22年度364人(定員充足率76.6%)と年々低下し、定員割れしてしまったことにある。

(続く)