大幅に緩和が進む女子大の「入り口」
収容定員充足率と立地についてはすでに触れた。三つ目の要因として挙げるのが入試難易度である。A、Bグループのいくつかは平均レベルよりも上だが、その他多くの女子大は入学に際してのハードルがかなり低く、全入状態のところもある。
河合塾の設けた2.5刻みの入試難易度が35に達せず、合否判定もできないボーダーフリー(BF)の学部学科も珍しくない。一般選抜での入学者確保が困難となり、総合型選抜(旧AO)や指定校推薦などの学校推薦枠に入学者の確保を依存していくことを意味する。特に昨今は“指定校”の基準はダラダラになって、どこでもいいという“指定なし推薦”になっている。大学によっては、外国人留学生を大量に入れて、地域で問題化する例もある。
この他にも、「入り口」としての入学者選抜の状況、「出口」である就職など卒業後の進路にも直結する教育カリキュラムのあり方、具体的には学部や学科・専攻の構成も、女子大の持続可能性を測る上での重要な判断基準となるだろう。
図に挙げた女子大は、多摩地区にある津田塾大と白百合大を除けばいずれも、本部と主要キャンパスを東京23区内に置いている。そして、二つを除けば学部の収容定員は割れていない。
Aグループから見ていこう。1980年代、国立のお茶の水大は別格としても、津田塾大と東京女子大は早慶と肩を並べるほどの存在だった。まず驚かされるのは、その入試難易度の低下だろう。日本女子大の最高値「62.5」は、家政学部管理栄養の一つの入試があるだけで、残りは50台が多くを占めている。津田塾大と東京女子大では最高値でも60に届いていない。MARCHよりも日東駒専に全体的な入学時の水準は近づいている。
ただでさえ、大学進学率が上がり「偏差値50」という平均は下がっているのだから、学生の知的レベルの低下に教える側の苦労は大きいだろう。
募集人員と志願者数を2000・2010・2020年度でそれぞれ見てみると、津田塾大は「510人・4063人」「490人・5190人」「520人・4492人」と波があったものの、23年度は「450人・3095人」とだいぶ縮んでいる。
同じく東京女子大は「898人・1万1843人」「843人・9632人」「673人・8409人」と縮小傾向が続き、23年度は「629人・7356人」と、受験生が前年度比で1000人減った。これを見ると、メインキャンパスを多摩地区に置いているにもかかわらず、津田塾大は健闘しているといえそうだ。
その点、日本女子大は「1230人・9080人」「1240人・1万4642人」「1232人・1万1660人」と志願者数はむしろ増えていた。23年度に募集人員を917人とだいぶ絞っても9702人が志願しており、このグループの中では最も堅調といっていい。
Bグループには学生数が比較的多い女子大が並ぶ。いずれも定員割れは起こしていないものの、偏差値50未満の学部・学科が多く見られる点に特徴がある。
これは、学生の会話などを分析して観察されたものだが、「偏差値52.5の壁」というものがある。この“壁”を下回ると、学生の関心事に「資格の取得」の占める割合ががぜん高まってくるというのだ。就職という「出口」に向けて、「“手に職”がないと不安」という学生が多いのが、この壁を越えられない大学の実態というわけだ。
そうした事情を反映しているのだろう、共立女子大には「ビジネス」「建築・デザイン」と就職を意識した学部がそろい、昭和女子大には「国際」「グローバル」「環境」といった今風な学部ができている。語学や文学、家政学や保育・幼児教育といった短大同様のカリキュラムが主流だった女子大ではあるが、これらの学びの提供だけでは、今後も学生の人気を得ることは困難なのかもしれない。