学習カリキュラムを強化する
生徒が開発した学習メソッド

◆フェーズ5:コンペへの準備と出場

「プロセスシート」では、Future Compassで作成した問いに答えを出すための方法(TODO)、その答えから課題を定義し、解決するまでのプロセス(TODOMAP)、メンバーのタスクの進捗(しんちょく)状況などが共有できる 画像提供:芝浦工業大学附属中学高等学校
拡大画像表示

 コンペに参加するチームは、高校2年次に確定する。学年全体でメンバーを“公募”するため、別のクラスの生徒ともチームを組むこともあるが、探究学習の時間割は、当然クラスによって異なる。コンペ準備の進捗(しんちょく)をどうやって管理するのか。

 これには、クラウド上で計画全体、および個人タスクの進捗(しんちょく)確認、活動の振り返りなどを共有できる「プロセスシート」を活用している(上の図)。チームごとにいつまでに何をすべきか、それを授業の際の活動にどう落とし込むかを生徒自身で構築することができるよう工夫されている。

 これら一連の探究学習カリキュラムにおいては、教員は生徒の主体性を重んじ、生徒の思考プロセス育成を支援する立場に徹している。それだけに、先に紹介した「Future Compass」のプログラミング以外にも、生徒自身が学習状況を振り返ることによって、より効果的な探究学習メソッドが生まれたこともある。

 代表的なのが、あるグループが自主的にグループディスカッションの録音データを分析し「活発な発話と感情分析の関係」をひもといて、良いディスカッションの在り方を明らかにした事例だ。

・良いディスカッションには沈黙がある
 →各自の考えをまとめる時間、情報の浸透 など

・ディスカッションの収束、発散のタイミングで「これはいいね」や「その新規性はどうなの?」といった言葉が出る
 →共感や理解を深めるための疑問 など

・「共に、互いに」など団結を促す言葉から「良い、理想」などの道徳的な言葉へ移行する

 手探りでカリキュラムづくりを進めてきた教員からすれば、こんなにうれしい“誤算”はないだろう。外部の識者などの協力を得ながら、新しい工夫を授業に持ち込む教員の機動力に加え、生徒自身が興味を持って自分の強みを見つけ、他者と協力してより良い結果を導くためのさまざまな思考法と実践法を学ぶ。こうした探究学習は、将来、生徒が社会人となり、キャリアを考える段階まで影響を及ぼす取り組みとなることは間違いない。