探究活動の失敗を大学の志望理由書に書く「探究推進校」
大学が「自ら学ぶ力のある」の学生を求める中、高校での探究授業の現状はどうなっているのか。第3回では「探究の指導に悩む高校教員」の実情を調査結果に基づいて取り上げた。
今回は探究授業のもう一つの側面、つまり、探究に注力する高校ならではの課題としての「教員の過剰な関与」を指摘しておきたい。パターンとしては、指導教員が生徒の探究活動に関与し過ぎて「先生の探究」になってしまうケース。あるいは、生徒の思考と関係なく教員自身の経験から得た「答え」に導こうとするケース。いずれも、高校生が主体的に学ぶ力を育てるという「探究」の本来の目的を見失っていると言わざるをえない。
その一方で、指導教員が「このまま進めると失敗する」と分かっていながら、あえて口出しせずに探究活動の結果を失敗に終わらせる「探究推進校」もある。そして、そこからの学びと共に、「失敗の原因を突き止め、解決するためにこの大学でこれを学びたい」と、総合型選抜に提出する「志望理由書」に書くよう指導する。「これほど説得力のある志望理由はほかにない」(ある高校の探究学習指導教員)だろう。
「総合的な探究の時間」が必修化されて3年。このように、一部ではあるが「探究」に対する高校の取り組み方にも進化が見え始めている。「探究1期生」である現在の高校3年生を見て、「去年の高校3年生とはとにかく違う」と話す高校教員もいる。
「現在の3年生は、グループワークによる発表といった課題を与えると、驚くほどスムーズにやり遂げてしまう。教育が変わると生徒も変わると実感した」(都内の高校教員)
新学習指導要領は、「探究」を高校生が自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析してまとめ、表現することと定義している。高校での探究活動を通じ、また、大学の「探究入試」によって、文部科学省が「明治維新以来の大改革」と位置付ける高大接続改革の成果が少しずつ表れてきているのではないだろうか。