見たこともない問題が出ても慌てない

 2021年の初回試験実施時から、「センター試験とはまるで別物」とみられていた共通テストだが、翌22年度には「数学Ⅰ・A」の平均点がセンター試験時代も含め、初めて40点を割り込むという事態に陥るなど、その別物ぶりは予想外だったという声があちらこちらから聞かれた。

 都内の進学予備校で日本史を教える講師のA氏は、「教科書や参考書にも載っていない、国会図書館で探さなければ見つからないような史料が出題されています。センター試験は用語集を暗記すれば対応できましたが、授業や教科書で学んだ知識を運用して考える力がなければ対応できないのが共通テストでしょう」と、教科書とは別物の思考力の必要性を実感している。

 共通テストは、「知識の量」ではなく「知識の使い方」を評価する。学力の3要素を重視する姿勢が、その出願傾向に反映されているのだ。

 例えば、英語では、Webサイトの広告(23年度)やイベントポスター(24年度)の英文が提示され、さまざまなニーズを満たすにはどうしたら良いのかを問う出題がなされている。また、数学でも、二次方程式を使ってバスケットボールのシュートの軌道を計算させる問題が見られた(23年度)。

 首都圏の公立高校で進路指導を担当するB教諭は、「問題文をきちんと読んで理解すれば答えられる出題であり、その点では知識がないと解答できないセンター試験よりは正解が得やすいと思います。しかし、正解を答えるのがテストだと思い込んでいる生徒には難しかったようです。教科を問わず、問題文を読解して考える『国語力』が求められるテストになりました」と、教室での勉強との溝は深い現状を振り返る。

 私立大学の「暗記型」一般選抜、国公立大学二次試験の「記述型」とも出題傾向が異なる共通テストは、いわば「第三のテスト」といえるかもしれない。それだけに受験対策も難しく、23年度は前年比で1万8000人弱、24年度は同じく2万人強志願者数が減るという「共通テスト離れ」も進んだ。

 だが、過去4回の実施を経た今日、高校生や高校教員、あるいは塾からも、共通テストの「癖」に慣れてきたという声がちらほら聞かれる。「見たこともない問題が出ても慌てない」ためのノウハウなどが確立されつつあるようだ。