「偏差値の低い大学が消える」という認識違い
助成金に関しては、財務省もついに声を上げた。4月15日、同省の財政制度等審議会の分科会 は「定員割れを起こしている私立大学の中には、義務教育で学ぶような授業を行っている大学がある」と指摘。学びの「質」を重視し、高等教育にふさわしい教育を行う大学に助成金を交付すべきと主張した。同時に、大学の設置認可審査を厳格化すべきという。
対して文部科学省は、入学後に基礎知識を学び直すことで学生がその後の高等教育へスムーズに移行している大学のケースを紹介し、学生の4年間の成長や就職といった「成果」を評価すべきと主張した。
「質」か「成果」かは、大学にとって極めて重要な論点だが、定員割れは大学経営に直結する深刻な問題だ。安定した経営も望めないまま議論をしても意味がない。設置認可の審査をより厳密にという財務省の主張には、文部科学省も同調している。
18歳人口は、89年の193万人から現在は110万人程度まで減少した。この間、大学の数は499校から813校に増加している。また、16年以降に新設された44の大学のうち約70%に当たる30校が24年度に収容定員割れを起こしている(財務省・文部科学省ほかの資料による)。
大学設置基準が大幅に緩和されたのは91年のことだ。これによって教育・研究だけではなく、大学自体の多様化が進んだのは確かだが、18歳人口の急激な減少に従って、無秩序さが露呈してきたということかもしれない。
都内のある私立大学職員A氏は「学部の新設を文部科学省に申請する際は、ニーズ調査を実施し新設学部が入学定員を充足できるというデータを示さなければ認可は下りません。某大学は、このニーズ調査を付属高校で実施したと聞いた」と語る。
「こうした調査結果で審査をクリアしてしまうこと、書類に不備がなければ認可してしまう文部科学省のやり方にも疑問を感じます」(A氏)
大学を取り巻く環境は厳しくなるばかりだが、現在8校の私立大学が26年4月の開設に向けて認可申請を行っている(*2)。大学コンサルタントのB氏は「偏差値が高く、難しい学問を学ぶ大学ほど価値がある、というのは旧来の考え方」と述べる。
「偏差値の低い大学から消えていくべきという考え方は誤りでしょう。受験生の層によって、それぞれ異なる大学へのニーズがあり、偏差値に関係なくそのニーズに応えられない大学から消えていく。基礎学力の学び直しというニーズがあって、それに応える大学は生き残っていくはずです」(B氏)
小規模な女子大学であっても「この女子大を選ぶメリット」を他大学と明確に差別化して発信できる大学こそが生き残るのではないか。
*2 「令和6年10月末申請の大学等の設置認可の諮問について」(文部科学省)