慶應義塾幼稚舎・横浜初等部の入試対策は?
コノユメSCHOOL代表の大原英子氏は、東京大学卒業後、2011年に小学校受験専門の幼児教室を設立。2022年には現在のオンライン指導を主体とした株式会社コノユメを立ち上げた。
今回は、対面指導の「慶應幼稚舎・横浜初等部行動観察講座」を取材。
東急目黒線の不動前駅から約5分のところにあるコノユメSCHOOL目黒校舎で、12名の生徒が2時間の対面指導を受講した。
慶應義塾幼稚舎の小学校入試はペーパー試験がないことで知られ、「行動観察」「運動テスト」「絵画制作」の3つの試験が行われる。
「行動観察」はリーダーシップを評価
「行動観察」対策では、「風船つき」を行った。一人ひとりが、カラフルな数字が付いたゼッケンのユニフォームを身につける。3つのチームに分かれて、まずは風船をお互いにパスして遊ぶ風船つきをする。
チームごとに、風船をお互いにパスしていかに長く遊ぶかがテーマ。風船を床に落とさないように、みんなでついて長く空中に浮かせられるかを競う。
三角コーンが置かれたエリア内でプレーをする。「もう少し広がろう」「コーンが置かれたエリアの中でね」と最初に口に出して、リーダーシップを示す生徒は評価される。
実際に風船つきが始まると、バレーボールのようにスパイクを打つ生徒も出てくる。相手が風船を捕れないように勝負をつけようとしている。この行動は、風船つきのルールや目的と違っているため評価されない。指示されたルールを理解する能力、次にそのルールを守って実行する能力が求められる。
講師はこう講評をする。
「ルールを理解していない人も見受けられました。その場合、最初に仲間同士でルールを確認することが大切です」
協調性を測るテストに見えるが、それだけではなく、ルールを把握する理解力、わからないことがあれば仲間に質問する質問力、仲間からの質問に答える表現力、積極的に行動できる自発性なども求められるようだ。
「行動観察」は話し合う力も求められる
次に行われた「行動観察」対策では、「玉入れ」を行った。白い長方形の6つのカゴが床に並べて置かれる。このカゴに、布でできた玉を1つずつ入れていくという課題だ。線が引かれ、そこから投げるルールになっている。なるべく多くの玉をカゴに入れたチームが勝ちだ。
生徒たちは「次は私がやってもいい?」とチームメイトに声をかけ、「いいよ」と言われたら玉を投げていく。カゴは決められた線から少し距離があるため、玉はなかなか入らない。うまくいかない場合は「おしい!」と仲間が声を出して励ましていく。
ゲームが終わると講師からの講評だ。
玉が余っているチームがあり、それはもっとテキパキやったら玉をすべて投げられたのではないか。さらに目的は「チームで勝つこと」だから、みんなで平等に投げていくより、残った球は上手な子にたくさん投げさせることも必要だという指摘がされる。
「チームで勝つための作戦」を考え、話し合う力も求められるようだ。
「行動観察」は表現力だけでなく、質問力も重視されている
次に「絵画制作」。画用紙とクレヨンが配られ、「こんな乗り物があったらいいな」という夢の乗り物を一人ひとりが描いていく。
絵を描き上げると、グループ内で自分の描いた乗り物を説明し、他の生徒が質問していく。
講師からの講評は以下だ。
この絵を描き上げて説明をする中で、自分の体験と結びつけて表現することもポイントとなる。
また、ある生徒に対しては「普通は外観に関する質問で終わってしまうが、彼は『その乗り物はどう動くの?』と機能や中身について聞いていて質問が上手です」と評価した。
ウサギの形をした乗り物があり、ウサギの長い耳を利用して病気やケガを治すという。この乗り物に対して「どうやって病気を治すの?」「乗り物の中はどうなっているの?」と具体的な質問をし、仲間から言葉を引き出していくことができると、より高く評価される。
この「夢の乗り物」を描くワークでは、発想力(何を描くかを考える力)、表現力(自分の絵を説明する力)、質問力(他の子が描いた絵に対して質問をする力)が問われるように見えた。言われたことをこなすだけではなく、自分の個性を提示することも大切だと思われる。
チームワークが求められる「行動観察」
最後に行われた「行動観察」は、木製の積み木を使って、タワーを組み立てていく共同作業だ。複雑な積み木のようなものだと想像してほしい。
木製の積み木を組み立てたタワーの見本がついたての裏に置かれている。走って行き、その見本を確認し、少し離れたところで、共同でタワーを組み立てていく。一人が一回で2つの部品を使うことができる。
まず見本のタワーを見て、自分が何をするかを把握する力が試される。そして共同作業なので、仲間との連携も必要だ。
3つの部品を置くべき時に、2つの積み木しか置けない。その場合は次のチームメイトに「3つのうち2つは私が置いたから、次の積み木を1つ置いてね」と伝えることが求められる。
複雑な形状のタワーであり、その構造を瞬時に把握して的確に作業を進めていくのは難易度が高いように見える。
参加した生徒の保護者はこう話す。
「決まった答えを暗記するのではなく、自分がその場でどう感じてどう思ったかを表現することが大切だと学びました」
この対面指導を主催したコノユメSCHOOLの大原英子さんは言う。
「『行動観察』ではいかにチームで成果を出すかが求められます。企業のチームマネジメントに近いチームワーク能力が求められます」
慶應義塾幼稚舎・横浜初等部の「行動観察」の試験では、かなり高度な能力が試されるだけに、綿密な入試対策が求められている。
コノユメSCHOOLの基本情報
校舎 |
東京都目黒区 |
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対象年齢 | 子どもの年齢が3歳頃〜6歳頃 |
授業料 |
月額プログラム(オンライン):月額11,000円 (家庭学習(週2回配信)、学校情報、講演会・学校探検、合格体験座談会のほか、週末ライブ講座を視聴できる) |