「やってみよう」と「やってよかった」と思わせる

 お子さんのやる気を引き出すためには、大きく分けて2つの必要な働きかけがあります。1つは「やってみよう」と思わせる働きかけ、もう1つが「やってよかった」と思わせる働きかけです。「やってみよう」⇒【やってみた】⇒「やってよかった」⇒【またやろう】という流れを作るということですね。

 前回の「子どもとスケジュールを立てるときに絶対にやってはいけない3つのこと」でお伝えした内容である、「やらなきゃよかったと思わせないようにしましょう」というのも、この流れが理解できていればあたりまえのことだなと納得していただけるのではないでしょうか。

 この公式はあらゆることに対して当てはまります。子どもが何かに夢中になっているのは、それがゲームであれスポーツであれ「やってみよう」と思ったきっかけがあり、やってみた後で「やってよかった」と感じたからです。

 逆に、何かをするのを嫌がったりめんどくさがったりするのは、それが宿題であれ運動であれ読書であれ「やってよかった」という経験が無いためです。運動や音楽など、好きなことに打ち込んでくれればいいのなら自然な成り行きに任せてもよいですが、例えば勉強など、特定の何かを好きになってほしいのであれば、意識してこの流れを作らなければいけません。

「やってよかった」は子どもの性格によって変わる

 それでは、どうすれば「やってよかった」と思うでしょうか? これはお子さんの性格によって変わるものなので、親としての力量が試されます。あなたのお子さんが喜ぶことを把握できているかどうかが問われるのです。ぜひ時間をとって考えてみてください。

 まったくの0から考えるというのは大変かもしれないので、いくつかヒントを挙げますね。多くの子にとって「成長が感じられる」ことは「やってよかった」に繋がります。しかし残念ながら、宿題をするかしないかでテストの点数が上がったか下がったかは、目に見えないことが多いです。ですから多くの子は宿題にやりがいを感じません。

 普通にやらされるだけでは、なかなか成長を感じられないんです。では成長を可視化するにはどうしたらよいでしょうか?

 例えばそれは、お子さんが以前はできなかったけど今はできるようになっている単元を見つけてあげるといったことかもしれません。あるいは、自分の頑張りを見ていてくれる、認めてくれるというのも、多くの子にとってやりがいになるものです。

 できていないところを探して注意したくなる気持ちをグッとこらえて、できているところにフォーカスして褒めるようにすると、子どもはやりがいをもって取り組むようになります。

追加で勉強をやらせてはいけない

 できていないところを探す以上に良くないパターンとして、やるべきことが一通り終わっていてもさらに「もっともっと」と追加でやらせようとしてしまったりすると、「いつまで経っても終わりがないのか……」と考えてしまいやる気を失わせてしまうので注意してくださいね。

 お子さん4人を東大理Ⅲに受からせたことで有名な佐藤ママも「勉強は親子の契約」といって、約束した勉強が終わった後で追加の課題を出してはいけないとおっしゃっていましたね。我々大人に置き換えると、仕事において契約上の義務を履行したのにもかかわらず、「もっとサービスでいろいろしてくださいよ」と言ってくるような顧客とは付き合いたくないと思うのと同じということですね(笑)。

 目標を達成したときに何かご褒美があるというのも、シンプルですが効果的です。ですが、子どもが元々好きで自発的にやっていることに対してはご褒美を与えてはいけないということに注意してください。好きという気持ちを失わせてしまうことになります。これは心理学で「アンダーマイニング効果」と呼ばれます。

 ご褒美作戦は、お子さんがあまり好きではないと思っている科目や単元に対して使うのが効果的です。元々失うような「好き」という気持ちが無いのであれば安心して使える作戦ですね。他にもいろいろとやりようはあると思いますが、これ以上書くと長くなりすぎるので今回はこの辺にしておこうと思います。

 まとめですが、お子さんへの働きかけは「やってよかった」と思わせるものになっていますか?「やらなきゃよかった」と思わせるものになっていませんか? 今日から意識してみてくださいね。