AIの仕組みを知って
自己判断しながら活用
21世紀に入り、気候変動や社会・経済格差の拡大、紛争や感染症まん延など、人類は大きな課題に直面している。
一方で、生成AIが社会に浸透し、さまざまな分野で活用され、かつ知識や技術だけの仕事を人々から奪っていこうとしている。さらに便利な日常は、ネット依存やネット犯罪という負の側面と隣り合わせだ(図1)。
このように複雑で予測困難な21世紀のデジタル社会を生きていくために、子どもたちが習得するべき知識やスキルも大きく変化している。
公立はこだて未来大学教授の美馬のゆり氏は「負の面を恐れてAIの技術を使わないのではなく、AIの仕組みを知り、自分が意思決定する中で、よりよい使い方をしていくためのリテラシーを身につけることが必要です」と説く。
OECD(経済協力開発機構)は2019年「2030年を生きる子どもたちの学習の枠組み」で、新たに変革を起こす「コンピテンシー」として、新しい価値を創造する力、対立やジレンマに対処する力、責任ある行動を取る力の3つを追加した。
「このコンピテンシーという言葉は“資質・能力”と訳されることが多いですが、本来の意味は“有能だ”と認められるありさまや、在り方のことです。成功した人がもともと持っている能力ではありません。さまざまな行動の中で立ち現れてくる有能さや、多様な“良さ”のことです」(美馬氏)
例えば、外国人と英語で堂々と会話できることだけがコミュニケーション能力ではなく、道で困っている外国人に声をかけ、身振り手振りで問題を解決してあげるのも立派な能力だ。