「置き去りの人がいないか」
解決する中で不可欠な視点
「学習の目標は問題の解決だけではなく、プロジェクト遂行の過程を振り返り、体得した知識やスキルを他の状況でも適用できるようにすることです。また、単に問題を解決するだけではなく、これからは『この方法で置き去りにされる人はいないか?』という視点が絶対に必要。いわば弱者へのまなざしです。マジョリティ側にいると、気が付きにくいものですね」(美馬氏)
「AARサイクル」は、近年特に注目されている学習法の一つだ。学習前、最中、学習後の各段階で、意識的に自己観察して、自分をコントロールすることで思考を深め、メタ認知力(自分自身を客観視する力)を養う。「読む、見る、聞く」から学ぶことなので、毎日の学習の中ですぐに始められる。
「読む」を例に取ってみよう。本や資料を読むときは、読み始める前に読む目的をはっきりさせ、得られることを予想して、メモに書き出しておく。読んでいる最中には、書いてあることは本当か、なぜこのような内容になるのかと疑問を持ち、批判的に読む。読んだ後は内容をまとめて、自分の言葉で置き換えたり、誰かに説明したりする。そして読み始める前に書いた目的を達成できたかどうかを振り返る。
こうした学習を通して「コンピテンシー」が評価されることで、子どもたちは自分の才能に気づいていくのだ。
2000年に開学した公立はこだて未来大学で、美馬氏は同僚や学生たちとPBLを実践してきた。全国各地の小中高校の学習機会に接することも多い。そこで感じるのは「子どもも大人もグローバルな視点が絶対的に不足していること」だと指摘する。
「これはある意味、日本が平和で経済も悪くなかったからでしょう。でも今はグローバルな視点や意識が不可欠な時代。そのために、私は親子で世界のニュース番組を見ることをおすすめしています」
例えば、世界各国の放送局のニュースを集めた「ワールドニュース(NHK BS)」で、どの国がどんな話題をトップニュースとして報道しているか。世界共通の課題である地球温暖化であっても、各国の考え方の違いがはっきり分かる。親子で見ながら感想を伝え合うだけでも、子どもの意識は世界に向くはずだ。
「世界とつながるコミュニケーションツールを活用して、いろんなことにチャレンジしてほしいです」(美馬氏)