
車の運転に例えてみましょう。運転免許を取りたてで運転に慣れていない人は、運転そのものに集中しなければならず、同乗者との会話を楽しんだり、景色を愛(め)でたりする余裕はないですよね。でも、何回も道路に出て慣れてくると、次第に運転以外のことにも頭を使い、楽しめる余裕が出てくる。
計算も同じで、慣れることが大事。訓練するときには、時間を意識しましょう。ストップウォッチやタイマーを用意して「制限時間内に10問解く」など具体的な目標を立てて、毎日行います。計算力は、どんな問題を解く際にも必ずお子さんの武器になります。
センスは必要なし!「解法の手順」の暗記が肝
算数が伸び悩んでいる親御さんから「うちの子は算数のセンスがないみたいで……」という言葉を聞くことがあります。確かに一部の非常に高いレベルの応用問題においては、センスが必要なものもあるといえます。しかし一般的な中学受験の算数においては、センスは必要ありません。必要なのは暗記力です。
暗記といっても理科や社会のような、用語や年号の暗記とは違います。「解法の手順」を覚えるということです。
算数が得意な子は、この解法手順の引き出しをたくさん持っています。問題を読んだときに、サッと解法を取り出せるかどうか。これが算数ができるかできないかの分かれ道になります。
お子さんは毎日、最寄り駅から自宅まで、何も考えずに歩いて帰れますよね。なぜでしょうか。それは何度も駅から家まで歩いて帰った経験によって"帰る手順"を覚えているからです。
同様に、繰り返し問題を解いてパターンを暗記しておけば「この問題はこの解法」と判断することができるようになります。
ただし、問題を解けたからといって、必ずしも解法の手順を理解しているとは限りません。たまたまその問題が解けただけかもしれない。そこで私はいつも親御さんに「どうやって解いたか、お子さんに解説させてください」とお伝えしています。人に説明できるなら、理解している証拠。曖昧なところは「なんでそうなるの?」と問いかけながら、ロジカルに正解にたどり着いているのかチェックしてください。