偏差値と倍率の関係を左右する決定的な要因

 入試で気になる数値といえば、「偏差値」のほかに「倍率」がある。この両者の関係を少し整理しておこう。

 一般的に「倍率」には、入試前の人気度を測る「志願倍率」(出願者数÷募集定員)と、入試後、実際に受験した人が合格した割合の「実質倍率」(受験者数÷合格者数)がある。

 ここでは「志願倍率」と「偏差値」の関係に触れる。「志願倍率が高い入試は偏差値も高い」のだろうか。

 必ずしもそうではない。「志願倍率が上がった(=出願書者数が増えた)ことで、(成績上位層の割合が拡大し)志願者の母集団全体のレベルが上がれば偏差値は上がる」「志願倍率が下がった(=出願書者数が減った)ことで、(成績下位層の割合が拡大し)志願者の母集団全体のレベルが下がれば偏差値は下がる」のが基本構造だ。

 例えば、A中学校の志願倍率が下がった場合でも、成績上位層の割合が変わらず、下位のチャレンジ層が減った場合は、偏差値は大きく変動しない。

「首都圏中学模試センターでは、各入試志願者の3年分の平均偏差値を比較して、平均偏差値が上昇していれば母集団のレベルが上がり、次年度入試で偏差値が上昇する可能性が高いと判断しています」(鈴木氏)

 さらに一歩進めて、母集団のレベルが上がる、つまり優秀な志願者が多く集まる要因を考えてみると、前述した新設、共学化といった大きなトピック以外にも「口コミ」による学校の評判の高まりという要因が大きいと考えられる。

「25年度入試で人気校だった桜丘や日本工業大学駒場は、共学化は約20年前のことであり、近年これほど大きな改革を行っていないのに多くの志願者が集まったのは、在校生やその保護者の評判が、受験生に口コミで伝わっていたからでしょう」(鈴木氏)