一方、多摩地区の志願者数は昨年と同程度に落ち着く見込みだが、その中でも人気校となりそうなのが、工学院大学附属、聖徳学園、東京電機大学、武蔵野大学、明星の各共学校だ。
埼玉は、24年度に開校した開智所沢が25年度入試に与えた影響は大きかった。同校は一度の受験で開智学園グループ複数校の合否判定を受けられることから、25年度は延べ志願者数が急増。偏差値は冒頭で述べたように前年度から11上昇した。
26年度はいくぶん志願者数減が見込まれるものの、偏差値が上がりすぎたために上位校に分類され、偏差値50程度のボリュームゾーンの受験生は、西武学園文理、細田学園、獨協埼玉などに流れる可能性がある。
千葉や茨城は、全体として25年度よりも志願者数がやや増加するものと見込まれる。千葉では流通経済大学付属柏、上位校の芝浦工業大学柏、麗澤の人気が高い。茨城の上位校・江戸川学園取手は、26年度から5科目入試を国算社理の4科目に戻し、1月9日に新たな入試回を設定する。埼玉入試の前日を狙う志願者が増えるのではないだろうか。
一方、26年度入試の神奈川の中堅・中位校は、全般的に志願者数の減少が予測される。原因としては、偏差値50台の学校が、神奈川からも通学可能な東京のエリアに多いことなどが考えられる。
絶対に避けたい、とても危険な「人気校だけの併願」
では、偏差値の動きから実際に受験する学校を選択する際、どこに注意すべきだろうか。最も念頭に置くべきことは「人気校だけの併願はとても危険」という点だ。「実際の入試では、偏差値以上に難易度が上がるケースもある」(鈴木氏)ので、偏差値だけでなく、志願者数の増減動向も考慮して併願スケジュールに組むことが重要である。
昨今はインターネット出願が一般的になり、入試前日まで出願が可能な学校が大半だ。各校の志願者数発表を確認した上で出願校を選択することができる。また、近年は2月3日午前の志願者数が減少傾向にあることも興味深い。
従来は連日受験するのが当たり前だったが、例えば、1日と2日の入試を受けて3日は休養し4日以降にまた受ける、そんな休日を確保する受験スタイルが増えているという。
中堅・中位校の受験は、長期戦になることも多い。偏差値の動きだけでなく、志願者数の増減、そして受験生の気力と体力、ひいては、学校との「相性」までを考慮した緻密な併願計画が成功の鍵となる。
そこで次回は、受験校選択における「学校との相性」の調べ方など、偏差値以外の「プラスアルファ」要因について考えていきたい。
