栄光ゼミナールが運営する「エクタス」は筑駒、御三家、駒東の専門
まずは、Z会エクタス(以下、エクタス)である。通信講座で有名なZ会ホールディングスは日本を代表する大手教育企業であり、傘下には栄光ゼミナールがある。校舎数が多く、面倒見のよさで知られる塾だ。中堅校対策で定評がある。
その栄光ゼミナールが別ブランドで運営する「最難関中学受験専門塾」がエクタスである。池袋、渋谷、吉祥寺、自由が丘、たまプラーザ、成城学園の6校舎のみで展開している。ホームページにアクセスすると、筑駒、御三家、駒東対策と明記している。2024年入試では、在籍者の2人に1人以上が筑駒、御三家、駒東に合格している。
この合格実績の理由は、徹底した少数精鋭制にある。厳選された講師、きめ細かく作られたテキスト、徹底したサポート体制で生徒を最難関校に導く。自習室完備で、いつでも質問ができる。
講師と生徒の距離が近く、講師が一人ひとりの生徒の得意・不得意も把握し、指導にあたっている。合格体験記を読んでも、生徒たちは具体的な講師の名前を挙げて感謝の念を伝えていて、面倒見のよさがわかる。
進級テストに合格しないと次の学年に上がれない
入塾テストはなく、体験授業を受け、エクタスの授業やテキストが合うようならば入塾が可能となる。ハイレベルな授業内容の塾なので、合う合わないがあるということだ。
4年の末には進級テストがあり、合格しないと5年に進級できない。大手教育企業のZ会ホールディングス傘下だからこそ運営できる、最難関校を狙える生徒のみを集めた塾である。
なお、裏技としては、他塾生が6年生の志望校別コースを受講すると、エクタスの自習室が利用でき、丁寧な質問対応を受けることができる。
ちなみに、1年生のクラスの約40%が私立や国立の小学校に通っている児童だ。国立の附属小学校は学力をつけるために塾に通う必要があるが、そのニーズに応える先としても、エクタスは人気があることがわかる。それだけ教育熱心な層から注目されている塾である。
2024年の春のエクタスの中学入試報告会に出席したが、そこで取り上げられた問題は難易度が高く、一般の大手塾とは一線を画する内容だった。機会があれば、一度出席してみてはいかがだろうか。
「桜蔭・女子学院専門」塾もスタート
このエクタスとは別に、栄光ゼミナールは女子生徒のみの最難関校対策の塾もスタートさせた。中野にできた「最難関女子中学受験専門館」である。ホームページには桜蔭と女子学院対策と明確に書いてある。
最難関校受験の世界でも、男子と女子では目指すところが違う。男子御三家の算数は本当に難しい。学力上位層の女子は、男子御三家を目指す男子と同じクラスになるため、オーバースペックになってしまうことも多々ある。
そのオーバースペックをこなし、高い学力を身につけられればいいが、実際には必要以上に難しい問題を解くことに時間を取られて、本来やるべきことができず、伸び悩むことも多い。
そうならないように学習内容を調整し、授業をしているのが最難関女子中学受験専門館である。桜蔭の国語は中学受験全体の中でもトップクラスに難易度が高いので、しっかりと論理的な思考力を鍛えていくカリキュラムになっている。
学習内容だけではなく、授業を受けるスタイルも女子と男子ではちょっと違う。男子の元気のいい言動を、「落ちつかない!」と苦手に感じる女子もいるだろう。
そのため、以前から「女子生徒だけの塾を作ればいい」と感じていたので、それが実現して素晴らしいと思う。実際、うまく運営されているという評判だ。この塾は校舎も教室も小さく、授業は10名以下の少人数制で行われるから、講師が生徒一人ひとりに目を配りながら指導ができる。
学力最上位層の女子生徒が集まる塾
栄光ゼミナールの運営だから、桜蔭や女子学院の対策ノウハウも完璧に持っている。「桜蔭と女子学院を目指す女子」というニッチだが、確実に需要があるところにターゲットを絞ったブランドを立ち上げたのは注目に値するだろう。
栄光ゼミナール中から優秀な女性講師も集められ、万全な体制で生徒を桜蔭と女子学院に導く。年に3回、保護者との面談があるが、希望すれば随時、講師やスタッフに相談ができる。塾側と保護者のコミュニケーションも重視しているのだ。校舎の内装もおしゃれで、1階にラウンジスペースがあるので、保護者はそこで子どもを待つこともできる。
こう書くと理想的な塾に思えるが、ネックは中野にしか校舎がないことと、入塾テストのハードルが高いことだろう。私が著書『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)でこの塾を紹介したところ、それを読んで入塾テストを受けたものの「玉砕でした」と嘆く保護者もいた。
エクタスとは違って入塾テストがあるが、そうそう合格しないので不合格でも落ち込むことはない。また、エクタス同様に4年の末に進級テストがあり、合格しないと5年に進級できない。授業を見学したが、小学生とは思えない集中力のある女子生徒たちであり、授業の内容もハイレベルである。
早稲田アカデミーが運営する「SPICA」は思考力対策を重視
最後に紹介するのは早稲田アカデミーが運営するSPICAだ。自由が丘のエステサロンを居抜きでリニューアルした校舎で、塾とは思えないラグジュアリーな空間だ。最難関校対策のために必要な思考力を伸ばすことに特化した塾である。4教科も取れるが、単科でも受講できるため、他塾と併用する生徒も多い。
たとえば、4年生と5年生が対象の「無学年講座」は、学年に関係なく授業を受けられる。1授業180分、月に3回、曜日も選べるので他の塾の生徒も通いやすい。実際、思考力をより鍛えるために通っている他塾生も多い。6年生では「筑駒・開成 算数思考力講座」「筑駒・開成 国語分析力講座」「筑駒・開成 理社考察力講座」が開講され、こちらも月3回だ。
なお、入塾テスト(入会テスト)のハードルは高い。
早稲田アカデミーの運営なので非常に面倒見がよく、講師たちは全力で生徒をサポートしていく。早稲田アカデミーといえば、開成や早稲田などの難関校対策の「NN志望校別コース」に定評があるが、このNNはとにかく情報を持っていることで知られる。他の大手塾に通っている生徒たちがわざわざNNを受講するのは、この情報を得るためという側面もあるだろう。その早稲田アカデミーの運営なのでSPICAも情報を豊富に持っていることが期待できそうだ。
SPICAは自由が丘にしか校舎はないが、月3回の講座なら通ってみようという場合は一度訪れてみてはいかがだろうか。なお、このSPICAの思考力対策を早稲田アカデミーの校舎でも導入し、難関校対策に使用をしている。
大手のノウハウや情報力と少数精鋭が強み
以上、大手塾が展開する「最難関対策特化型」の塾を3つ紹介した。大手の傘下なので豊富な入試情報を持っており、分析力も高い。それでいて、少数精鋭制が特徴のブランドなのできめ細かさがあり、講師にも当たり外れが少ない。
「この子を御三家に入れよう」と思っても、普通の家庭ならば、自宅から通いやすい場所にあるSAPIXや四谷大塚に入塾させるだろう。それを敢えて、これらの「最難関対策特化型」の塾に入塾させるのは、かなり受験に熱心な層であろう。
東京の多様性を象徴するエリート塾であり、御三家を目指すなら一度検討してみてもよいだろう。