「自らの成長のためには、自らに適した組織において自らに適した仕事につかなければならない。そこで問題になるのは、自らの得るべきところはどこかである。この問いに答を出すには、自らがベストを尽くせるのはいかなる環境かを知らなければならない」(『プロフェッショナルの条件』)
ドラッカーは、最初の仕事とは“くじ引き”だという。最初から自分に適した仕事に就ける確率は高くない。しかも、得るべきところを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年を必要とする。
われわれは、気質や個性を軽んじがちである。だが、気質や個性は、容易に変えられるものではないだけに、明確に理解することが肝要である。
得るべきところはどこかを考えた結果が、今働いているところではないということであれば、次に問うべきは、それはなぜかである。
組織の価値観、あるいは風土になじめないからか。もしそうであるならば、人は確実にダメになる。自ら価値があると考えるところで働くのでなければ、人は自らを疑い、自らを軽く見るようになる。
したがって、今、喫緊に求められているのは、誰もがフルに強みを発揮できるよう、いつでも方向転換が可能な社会の構築である。具体的には、多様性を歓迎すべきものとして推進する採用政策と企業風土である。
「自らがところを得ていないときには、辞めることが正しい選択である。出世はたいした問題ではない」(『プロフェッショナルの条件』)