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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

為替相場は今後「円安ドル高」傾向と予想する理由

介入は日銀でなく、財務省が所管

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第45回】 2016年10月5日
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 9月20~21日と、同じスケジュールで行われた日米の中央銀行の金融政策決定会議が終了し、金融市場は次なる中央銀行のアクションと金融市場の動きを考える時期になった。筆者はメガバンクにおいて、内外のディーリングルームで為替やデリバティブのディーラーや、経済調査室で国際金融担当のエコノミストとして、為替の分析や予想の仕事もしてきた。そんな経験も踏まえ、個人的には、今回の金融市場、特に為替相場の大きな動きは予想しやすいのでは、と考えている。

 日米中銀の金融政策決定会議の後、ドル安円高傾向で推移している為替相場であるが、今後、年末から来年にかけては逆にドル高円安方向に動くと予想する。今回は、その予想の分析プロセス・事由等を説明しよう。

 まず足元の為替相場の動きを分析する。時間を追って説明すると、9月21日にまず日本銀行が金融政策決定会合(MPM:Monetary Policy Meeting)を開催した。一部にマイナス金利の深堀り(利下げ)を予想する向きがあったが、結果的には、金利については利下げをせず、そのまま維持した。一方、同日の日本時間深夜、米国ワシントンでFRBの連邦公開市場委員会(FOMC :Federal Open Market Committee)が開催された。こちらも一部に金融政策の正常化として金利の引き上げを予想する向きがあったが、結果的に引き上げはせず、そのまま維持した。

 つまり、日本は予想における「利下げ」がなくなり、実質的には逆に「利上げ」の効果があった。米国は予想における「利上げ」がなくなり、実質的にはこちらも逆に「利下げ」の効果があった。拙著『通貨経済学入門(第2版)』(日本経済新聞社)にも詳しく書いたが、為替相場に最も影響を与えるのは、“金利”の動きと考える。また、相場は“予想”で、動くものであるし、今回の両中銀の動きは“予想”における日米金利差を狭くするものであった(米国の方が高金利)。そうなると当然のことながら、ドル円為替相場は、ドル安円高に動いたのである。

ドル安円高が日米で
“政治的”に心地よい

 このドル安円高の動きは、現状の日米間で“政治的”にも心地よい。それは「米国大統領選」があるからだ。経験的に、米国大統領選の前に景気にネガティブな効果がある利上げはない(本連載第43回参照)。それに加え、米国大統領選の前は「ドル安円高」に向わせる傾向がある。米国の大統領選挙は独特な州別票総取り方式である。為替相場ではドル高とドル安で、どちらが多くの州で評価されるかということが大事になる。

 ドル高でメリットを受けるのは金融業で、つまりドル高が評価されるのは金融業が主たる産業のニューヨーク州のみだ。対して他の州では、製造業や農業が主たる産業であることが多く、ドル安の方が評価される。つまりドル高では、ニューヨーク州でしか勝てないのである。そのようなことで、政治的には大統領選挙の前は「ドル安円高」が心地よいのである。ルー財務長官が麻生財務大臣に為替介入回避のプレッシャーを継続的に掛けているのもそのためである。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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