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田中均の「世界を見る眼」

英国は再度、国民投票でEU離脱の是非を問うべき

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第60回】 2016年10月19日
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EU離脱のダメージを最小化し
機会を最大化せよ

 先般行われた日本と英国の有識者会議(両国の国会議員、企業関係者、学者、ジャーナリストなどが出席)の場で、私は英国のEU離脱(Brexit)について次のように述べた。

 英国のBrexitの判断には本当に失望した。

 1970年代初頭、私がオックスフォード大学の学生であった頃の英国と、1990年代初頭に日本大使館の政務公使であった頃の英国とは大きく違った。90年代、消えゆく英国が蘇ったのはEUのメンバーであったからだと思う。にもかかわらず今回はEUからの離脱という非合理な結果となってしまった。

 Brexitは英国とEUだけの課題であると思ったら大間違いである。これは英国に投資している日本企業に大きな影響を与え日英関係にダメージを与えるだけではない。

 新興国の台頭により世界の秩序が大きく変わりつつある時、米・EU・日本という先進民主主義国は連携を強化しなければならないが、英国のEUからの離脱はEUの力を削ぎ、国際的な統治体制に甚大な影響を与える。このような基本的認識を新たにし、Brexitによるダメージを最小化し、機会を最大化するようにしてもらいたい。

 こう強調したうえで私は続けて次の点を指摘した。

・現在の状況は著しく不透明であり、これが為替を含む経済的変動の引き金になっている。最低限、離脱交渉の過程でも十分な透明性を担保してもらいたい。

・英国への投資は欧州市場への輸出や経済活動を前提にしており、これまでの欧州単一市場のメリットが失われないよう最大限努力してほしい。自動車工場はEUへの輸出も前提での投資を行っており、高率の関税がかけられることになると投資のメリットを失う。金融機関についてもEUのパスポート制度の下、ロンドンでの免許が欧州全域での活動を可能になる。企業は商業的判断で今後の投資を控え、EUの他の地域に投資の移転をすることを考えるのは自然なことである。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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