ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
みんなの就活悲惨日記 石渡嶺司

大学名差別は人事部の“免罪符”だった?
企業が難関大学生を採りたがる2つの理由

石渡嶺司 [大学ジャーナリスト]
【第6回】 2010年12月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

よくある光景~入社すれば高学歴でも雑用仕事?

 「いやー、ああもプライド高いと面倒くせえなあ」

 総合出版社の一社、改造新社の週刊GENZAI編集部。

 編集長の永山武はデスクである私、登川楓を相手に新入社員の愚痴をこぼしていた。こういうとき、部下は聞き役となるのがお約束である。

 「ほんと、そうですよねえ」

 もちろん、私も新入社員にむかっと来ることが一再ならずあった。だから追従というだけではない。

 特に国立C大学出身の常呂富夫については私も永山編集長も怒り心頭だった。今度の人事異動ではどこに出そうか思案中だ。もっとも悪評が社内中に知れ渡っているので引き取り先があるかどうか怪しいのだが。

 「新入社員の恒例企画、やらせようとしたら絶対にイヤと言い張るんだよ。しまいには業務命令ですか、とまで言いやがった」

 週刊GENZAIの恒例企画とは新入社員に変わったことをやらせ、体験レポートにまとめさせる。バカバカしいものが多いが意外とファンも多い。

 永山は「阪神ファンの集う居酒屋で巨人優勝を祝う」、登川のときは「コミケ会場でセーラームーンのコスプレをして決めセリフを連発」だった。恥ずかしさで一杯だったが、記事は好評で夕刊紙には「コスプレ美人記者」なる異名まで付けられたものだ。

 そして今年の企画は「素人でも参加できるお笑いグランプリに白塗り姿で参加」。当初は常呂と他の新入社員、川湯緑と尾幌厚の3人にやらせる予定だった。それが常呂の参加拒否で、結局2人になったのだ。

 「やっぱりさあ、難関大だ、国立大だというプライドが強すぎるのかねえ?」
 「でも川湯は早稲田かな。常呂が異常なんですよ。あの子、人の話を聞いていそうで、全然聞いていないんですよね」

 常呂もデータを集めさせればしっかりしたデータ原稿を書く。ただ、致命傷なのは記事にすると面白くもなんともなくなってしまう。なにしろ、10行に3回は「また」「あと」を使いたがる。いわゆる悪文も多く、結局は私が全部直すことになる。いくら注意しても聞き流すのも特徴だ。何かにつけて自分の出身大学を自慢したがるのも鼻につく。ゼミでPDCAサイクルとやらをやったらしく、やたらと吹聴する。編集部内では「サイクル君」と陰で呼ばれ、馬鹿にされているが本人だけは気付いていない。

 「尾幌はその点、行動力あるよな」

 尾幌は帝洋大の出身。人事部が行動力と読書量を評価して入社した。受験エリートでなく、英語などは全然できない。一方、物怖じしない性格で「白塗り」企画でも、「どうせなら」と自分で振り付けまで考えた。その結果、初戦敗退の予想を裏切り3回戦まで進出、その分だけ記事に厚みが出て評価された。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

石渡 嶺司 [大学ジャーナリスト]

1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。日用雑貨の営業の派遣社員、編集プロダクションなどを経て2003年に独立。日本全国350校を超える大学を調査、とくに就職活動をめぐって、学生や大学就職課、教職員団体、あるいは高校生向けに積極的な執筆や講演活動を行う。主な著書に『就活のバカヤロー』『最高学府はバカだらけ』(以上、光文社新書)、『ヤバイ就活!』『就活のバカタレ!』(以上、PHP研究所)などがある。


みんなの就活悲惨日記 石渡嶺司

「第二次就職氷河期」といわれる現在。学生、企業、大学、親など、取り巻く関係者すべてに悲壮感が漂っている。こうした悲壮感が漂うなか、彼らの実態とはどのようなものなのか。その様子を時系列で追いながら、誰が就活を悲惨にしているのか、“犯人”を探る。

「みんなの就活悲惨日記 石渡嶺司」

⇒バックナンバー一覧