情報技術の発展に伴って、働き方の改革が可能になっている。柔軟な働き方の導入は、さまざまな利点を持ち、成長戦略の重要な課題と考えられている。

 ところが、日本の実態を見ると、導入が進んでいない。なぜ進まないのか?

柔軟な働き方を広げる
テレワーキングへの期待

 働き方の変化としては、第1に、企業に就業することを前提として就業形態をより柔軟にするもの、第2に、企業から独立して仕事を進めるもの、の2つがある。今回は、前者について見よう。

 就業形態をより柔軟にする改革として、第1に、テレワーキングがある。

 テレワークの普及は、従業員にとって、多様で柔軟な働き方を選択することを可能にするメリットがあるとされる。

 また、企業にとっては、コスト抑制や、雇用可能な人材の拡大などのメリットがあるとされる。とりわけ、高齢化による労働人口減少に対応して、女性や高齢者などの人材を活用することを可能にするとされる。地方における雇用機会の増大にも資するとされる。

 政府は、2015年6月に閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」において、「週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数が全労働者数に占める割合を、2020年に10%以上とする」ことを目標とした。

 総務省と厚生労働省が、それぞれ年間10億円の予算を組んで推進事業を行なっている。

 政府は10月に「働き方改革実現会議」を開いた。議長の安倍晋三首相は、柔軟な働き方を広げるため、ITを活用して職場以外の場所で働くテレワークや、兼業・副業の促進に向けて「ガイドラインの制定も含めて多様な政策手段について検討したい」と述べた。病気治療と仕事が両立できるよう新たな対策づくりに取り組むことも表明した。首相は、テレワークや兼業・副業に関し「普及を図っていくことが極めて重要だ」と強調した(産経新聞、10月24日)。