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シリコンバレーを襲う「トランプショック」
雇用・プライバシーへの懸念が広がる

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第413回】 2016年11月15日
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戦々恐々とする
反トランプ派たち

シリコンバレーではトランプ氏の大統領就任に対して不安を示す声が聞かれる Photo by Keiko Hitomi

 「これで新しいエンジニアがまた雇いにくくなる。腹が立って仕方がない」。大統領選挙の翌日こう語ったのは、あるシリコンバレーのスタートアップのCEOだ。

 人工知能関連のテクノロジーを開発する彼の会社は現在急成長中で、エンジニアやプログラマーを多数雇い続けなければならない。だが、すでにインドや中国など技術を持つ人材を雇い入れるために必要な「H-1Bビザ」は、その認可プログラムが追いつかない。このCEOはこのまま待っていられないと、すでにカナダに拠点を設けて、そこで外国人技術者を雇い始めたという。

 ここ何年にもわたって、シリコンバレー企業はH-1Bビザのプログラム拡大を求めてロビー活動を繰り広げていた。だが、違法移民を閉め出すと同時に、アメリカ人の雇用を促進すると公約したトランプ大統領が就任すると、外国人を雇用することはさらに困難になるだろう。H-1Bビザは悪用されているとも見ているようだ。個人的にもトランプが嫌いだというこのCEOは、今後ビジネスにとっても大きな壁が立ちはだかると予想する。

 シリコンバレーは、トランプ勝利のパニックからどうにかして回復しようとしているところだ。

 民主党支持者が多いカリフォルニア州でも、ことにシリコンバレーはトランプ氏へ嫌悪をおおっぴらに表明してきた。共和党から州知事に立候補したHPのメグ・ホイットマンCEOすらトランプ非支持を表明し、リンクトイン共同創業者のリード・ホフマンは積極的な反対運動を続けて来た。もしトランプ氏を支持していてもそれを明らかにできないほど、ここは「ヒラリー一色」だったのだ。

 トランプ氏は、選挙運動期間中はシリコンバレーを訪問したこともなく、そもそもテクノロジーにもそれほど詳しいとは思われない。彼が「アルゴリズム」や「ビッグデータ」などと口にするのは、想像もできないだろう。

 これは、テクノロジーに興味があり、連邦政府のために新たに最高技術責任者(CTO)や最高情報責任者(CIO)職を設け、シリコンバレー企業とも親密だったオバマ大統領とは、比べるべくもないものだ。

 というわけで、シリコンバレーではこれから一体何が起こるのか戦々恐々としている状態だ。声を上げて批判した面々に、トランプ氏が報復しないとも限らない。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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