トランプ氏が大統領になったら
日本の自動車産業はどうなる?

トランプ氏に敵視される日本自動車産業の命運次期米国大統領選挙で共和党の候補者指名を確実にしたトランプ氏が、日本の自動車市場を攻撃している。もし彼が大統領になったら、日本の自動車産業はどうなるのか Photo by Keiko Hitomi

「彼ら(日本)は100万台以上の日本車を送ってくる。我々(アメリカ)はどうだ? 最後に東京でシボレー(GM車)を見たのはいつだ? 彼らはいつもアメリカを打ち負かしてきた」

 これは、次期米国大統領選挙で共和党の候補者指名を確実にした不動産王・ドナルド・トランプ氏の出馬会見での一節である。

 時代錯誤というか、事実認識に欠ける発言なのだが、彼の思想の根底にあるのは「米国車が日本車に叩かれてきた」というものであり、日本車への攻撃も含めたこうした極論が米国庶民の心を掴んだとされている。

 4年に一度実施される米大統領選挙は、今年11月8日が本選となる。二大政党制の米国では、民主、共和両党がそれぞれ各州・地域で開いた予備選・党員集会の結果に基づき、7月の全国党大会で正副大統領候補を正式に指名し、両党が本選で対決することになっている。現段階において、ポスト・オバマとして民主党からヒラリー・クリントン前国務長官、共和党から不動産王と言われる実業家のドナルド・トランプ氏が候補指名を確実にしている。

 ヒラリー・クリントン氏は、夫のビル・クリントン氏が大統領を務めていたときにファーストレディとしてその名を広く知られることとなり、その知名度を生かして今回、米国初の女性大統領に再チャレンジする。だが、それ以上に話題を呼んでいるのがトランプ氏だ。

 出馬当初は「泡沫候補」と見られていたが、極端な政策提言を乱発して勝ち残ってしまった。これは、米国における経済格差の拡大とこれを是正できない政治という、米国の現状に対する国民の不満をトランプ氏がうまく吸収したせいだと言われる。

「アメリカファースト」「偉大な米国の復活」を唱えるトランプ氏には、ナショナリズム、保護主義の色が強く見え、ときには人種差別的発言もあり、危うさも感じられるが、米国に漂うポピュリズムの風潮に乗った観もある。そのトランプ氏は、冒頭の自動車に関する発言やTPP(環太平洋経済連携協定)の破棄も訴えている。