トランプ旋風が止まらない――。このままいけば、共和党の大統領候補者レースを制し、ひょっとしたら「トランプ大統領」が誕生する可能性すら出てきた。
3月1日に行われたアメリカ大統領選における最大の地方予備選挙、スーパーチューズデイで圧勝したドナルド・トランプ氏。その過激な発言に賛否両論が飛び交い、ついに最新の民主党公開テレビディベートでは、「トランプ氏はレイシストか?答えてほしい」という質問が、ヒラリー・クリントン候補に直接ぶつけられた。共和党内部のエリート層は慌てて「トランプを止めろ」運動に血道を上げるが、「トランプフィーバー」はすでに一大社会現象に育ってしまった。
トランプ氏の「大統領の資質」が取り沙汰されるなか、不安を抱く日本人も多い。同盟国である日本にとって、新大統領が打ち出す経済、外交、安全保障政策の影響は計り知れないからだ。彼はなぜこれほどの注目候補になれたのか。「トランプ派」「反トランプ派」の両方に現地で聞き込み取材を行ない、彼らの本音を徹底的に探った。(取材・文/ジャーナリスト 長野美穂、本文中敬称略)
「トランプ大統領」を求める
米国民の知られざる声
「私、トランプがテレビでは見せない、ソフトで人間的な面を実際に見たことがあるの」
そう語るのは、カリフォルニア州クレアモントに住むジュディ・ニール(68歳)だ。
地元の共和党クラブの長を務める彼女のイチオシはテッド・クルーズ候補だが、トランプがもし共和党の指名を受ければ「100%のエネルギーを注いでトランプを大統領にする」と断言する。ニールは、違法移民によって殺害されたアメリカ市民を追悼する会「We The People Rising」の集会でワシントンDCを訪れたとき、トランプに初めて会った。
「ギャング活動や飲酒運転する違法移民に殺された市民が、実は全米にたくさんいるんです。そんな犠牲者を追悼するキルトを縫って展示していたら、トランプが『これは何?』と近づいてきたの」
トランプは犠牲者の家族に歩み寄り、キルトを手に取り、彼らの話に耳を傾けたという。