絶版となった漫画に広告をはさみ無料公開する試みがJコミで始まった。設立者である漫画家、赤松健さんの作品「ラブひな」全14巻は、11月末の公開からすでに250万のダウンロードを超えた。1月11日からは別の作家の作品が無料公開され、1月25日にも2作品が続く。

絶版漫画の無料公開がスタート!<br />人気作家による新ビジネスの舞台裏絶版漫画の無料サイトJコミを立ち上げた
赤松健さん

 特徴は無料の広告モデルを採用したことだ。Jコミは作者から許諾をとり広告を入れる。読者はPDF化したファイルをダウンロードでき、サイト上のビューアーでも漫画が見られる。作者は広告のクリック数に応じた広告収入を受け取る。PDFでは1ページ数十万円程度になるという。自動車漫画なら自動車の広告を入れられるように、読者への訴求効果も得やすい。赤松さんは「100人に1人クリックしてもらえればいい」と言うものの、「ラブひな」のクリック率は約10%と高い効果が出た。

 とはいえ、最大の特徴は、週刊少年マガジンで「魔法先生ネギま!」を連載中の人気漫画家である赤松さん自らが運営していることだ。多忙な赤松さんを突き動かすのは、主に次のような理由がある。

 まず、読者の立場で「古い漫画を読みたい、収集したい」という気持ちが働いたことだ。そのためJコミから埋もれた作品を世に出すようにした。次に、中古書店やネットオークションで売買されても作者に利益が還元されない状況を変えようとした。

 そもそも、漫画家の置かれた立場は決して楽ではない。人気作家でも1ページ数万円の原稿料といわれ、単行本の印税10%がなければ、アシスタントを雇い連載を続けるのもままならない。その上、ネット上には違法アップロードされた漫画が世界中で読めるようになっているのだ。そこで、読まれれば読まれるほど広告収入につながるという海賊版への対抗策になるビジネスモデルを立ち上げた。

 ただし、本来ここには大きな壁がある。それが出版社の存在だ。漫画は「作家→出版社→印刷会社→取次会社→書店→読者」という流れで読者に届く。出版社には作品そのものの著作権はない。そのため、作家が「作家→読者」というビジネスを行えば、出版社や書店が利益を逸するために抵抗されることが容易に想像できる。