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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

過労死防止にはストレスの原因の「自覚」が不可欠な理由

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第66回】 2017年1月4日
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行き過ぎた残業による過労死の問題がクローズアップされているが、残業時間そのものだけを考えても解決にはならない。むしろ、人間関係などから生み出されるストレスこそが、人の心身を蝕むからだ。こうしたストレスに対して、どう立ち向かえば良いのだろうか?(モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野准教授 渡部 幹)

ストレス解消法だけでは
その場しのぎでしかない

 昨年の電通女性社員自殺以降、職場の残業やストレスについての関心が高まっている。特にサービス残業を含む労働時間の多さが話題になっており、法に定められた就労時間をあまりに悪質に逸脱している企業が指摘される一方で、法が現在の働き方にそぐわないとする主張もみられる。

過度な残業が過労死の原因としてクローズアップされがちだが、人間の心身を蝕むストレスの原因はほかにもたくさんある。しかも、単なる「ストレス解消法」の実践では十分ではない。どのような考え方が必要なのだろうか?

 だが心理学的な側面でいえば、残業時間そのものよりも、残業によって生じる様々なストレスこそが問題なのだと、筆者は考える。仕事が面白く、残業代も支払われ、残業による弊害(健康や家族への影響)があまりない人ならば、残業があってもそれほど苦にならないだろう。問題は、常軌を逸した残業時間、お金にならないサービス残業、残業による健康被害や家族関係、対人関係への悪影響などが生み出すストレスにある。

 そして、仕事上のストレスを生み出すのは、残業だけではない。それを強いる上司、職場での人間関係なども主な原因だ。

 最近の関心の高まりとともに、マスコミはストレスにどう対処するかについて、多くの情報を提供している。だが、筆者は現在の状況に少し疑問を持っている。それは、それらの情報のほとんどが「問題の解決をしないまま、ストレスを低減する方法」を示すだけで終わっているからだ。

 例えば、先日このコラムでも紹介したマインドフルネスアプローチ(記事はこちら)は、ヨガや禅の考えを取り入れた実践的プログラムによって、ストレスを低減し、強いメンタルを作り、創造性を伸ばすとされている。そしてこの効果も、脳科学の研究により徐々に証明されてきている。

 だが、肝心のストレス原因については、全く未解決なのだ。もちろんマインドフルネスに効果があることには筆者も異存はない。したがって、実践すべきとは思っている。だが、同時にストレス原因をきちんと探るアプローチもしないと、単なるストレス解消だけでは、その場しのぎになってしまう。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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