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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

慰安婦像を巡る韓国の市民活動は民主主義を逸脱している

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第16回】 2017年1月11日
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総領事館前の少女像設置は
一部市民活動家の暴挙

 釜山市の市民団体は、昨年12月の慰安婦問題に関する日韓合意の一周年記念日にあたる28日、日本の在釜山総領事館の前に慰安婦を象徴する少女像を設置しようと試みた。これに対し、ここを管轄する釜山市東区は市民活動家団体が設置する少女像は通行の妨害になるとして強制撤去した。しかし、市民活動家らの電話による抗議など激しい批判を受け、一転して設置を容認した。

 日韓の慰安婦に関する合意では、韓国政府は日本大使館前の少女像を撤去するよう努力することになっていた。そもそも韓国国内の世論調査を見れば、慰安婦問題に関する合意よりも、日本大使館前の少女像の撤去に関する反対の方が大きい。韓国政府は慰安婦に関する合意の受け入れを元慰安婦や国民に説得しつつ、同時に少女像の撤去も行うことは困難であった。そこで、まず韓国国内での慰安婦問題の決着を優先し、それを踏まえて国民に少女像の撤去を説得する考えであったのであろう。

 そうした意図に反し、釜山の総領事館の前に新たに少女像が設置された。日韓の慰安婦問題合意は、日本が10億円を拠出した「和解・癒し財団」の努力によって解決の方向に大きく動き出していた。日本は少女像の撤去が確定する前にもかかわらず、拠出に応じたことは、それだけ誠意をもって合意を実現しようとしたということである。それにもかかわらず新しい像が設置されたことは日韓合意の精神に反することは明らかである。

 韓国の市民活動家は大統領を国会での弾劾決議に持ち込むなど、今勢いが増している。もともと慰安婦支援団体の抗議活動に対して無力であった韓国政府である。しかし、こうした市民活動家の暴挙ともいえる行動が外国との関係に悪影響を及ぼすことは許されない。これが適切に処理されない限り安定した日韓関係は望めない。日本としては、こうした市民活動家の暴挙とこれに対する韓国政府の無作為は容認できないことを強い姿勢で示す必要があった。

これ以上譲らない断固たる姿勢で
4つの措置を決めた日本

 そこで日本政府は、当面の間、(1)長嶺大使、森本釜山総領事の一時帰国、(2)釜山総領事館職員の釜山市関連行事への参加見合わせ、(3)日韓通貨スワップ(交換)協議の中断、(4)日韓ハイレベル経済協議の延期――の4つの措置をとることを表明した。こうした措置は、外交ルートを通じて韓国側に伝達された。その措置の解除について菅官房長官は、「状況を総合的に判断する」として、韓国政府の対応を注視する姿勢を示した。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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