ただ、問題を複雑にしているのは、これに野党の政治家が迎合しているということであり、その中心が「共に民主党」である。これは韓国の国内政治が対立と抗争の歴史であったことを反映してもいる。

 韓国では、朴大統領の弾劾に伴い、同大統領が進めた政策を全面的に否定するムードが拡大しており、来る大統領選挙に向けて世論迎合的な姿勢が強まっている。これに対し、韓国政府は財団事業の進捗状況を積極的に公表し、元慰安婦の間で財団事業に理解が深まっていることを周知しようとしている。しかし、挺対協に操られた市民活動家はこうした事実を無視しているのである。

 挺対協は過去にも慰安婦問題の解決を妨害してきたことがある。アジア女性基金が設立された時、7人の元慰安婦は日本の基金からの償い金と総理からの謝罪の手紙を受領した。ところが、挺対協は日本政府が慰安婦問題に関する法的責任を認めたものではなく、償い金も日本政府が直接拠出したものでないとして元慰安婦に受領を拒否させ、その代わり韓国政府に慰安婦への見舞金を提供させた。

 挺対協の実態を示したのは、最初に受け取った7人の元慰安婦に対しては様々な嫌がらせを行い、韓国政府の見舞金を渡さなかったことである。本来、元慰安婦の支援者であれば、日本の基金からの償い金を返還させ、その代わり韓国政府の見舞金を渡すべきである。しかし、そうせずにかえって様々な嫌がらせをしたということは、挺対協が真正な慰安婦支援団体というよりは政治活動家としての性格が強いことを意味しているのではないか。

 ちなみに、挺対協がアジア女性基金からの償い金の受領を拒否させた後、実は54人の元慰安婦が償い金を受け取った。アジア女性基金は最初に償い金を受領した7人の元慰安婦が迫害を受けたことから、この事実を公表しなかった。アジア女性基金と挺対協、どちらがより元慰安婦に配慮した姿勢と言えよう。

民主主義の観点からも
行き過ぎた韓国の市民活動家

 そもそも、韓国の市民活動家の行動は行き過ぎである。朴大統領に対する支持率が5%前後に落ち込んだとはいえ、国民の一部の抗議活動によって選挙に当選した大統領が国会の弾劾決議採択に追い込まれるというのは民主主義として如何なことかと思う。それが成功したことにより、市民活動家は力ずくで何でもできると考えるようになったら、非常に危険なことである。

 北朝鮮の核ミサイルの実戦配備が近づいている。北朝鮮が核ミサイルを配備したら韓国がいかなる脅迫を受けるか考えただけでも恐ろしい。日韓関係は、東アジアの地政学を眺めながら、理性的に対処していくことが何よりも求められている。一部の政治活動家に支配された現状を打破していくことが求められている。韓国の理性的な対応を求めたい。

(元駐韓大使 武藤正敏)