私たちの暮らしを快適、便利にしてくれるプラスチック。でも、その破片が海に流れ出ていきものの体内に入り、近い将来、人間にも害がおよぶのではと心配されている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、解説を紹介しよう。

*  *  *

健康被害の可能性も?マイクロプラスチック問題とは路上に捨てられたプラスチックのごみが、雨水に流され、川を下り、はるばる海の近くにたどりつき、満ち潮に乗って消波ブロックを越え、集まってきた(荒川の河口付近<東京都>)

 キミの持ち物にも、家にも、街にも、プラスチックはあふれている。日本語で「プラスチック」というと、文房具やおもちゃ、ペットボトルなどが思い浮かぶけれど、英語でポリ袋のことを「プラスチックバッグ」というようにレジ袋や化学繊維もプラスチック製品だ。

 プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)は加工しやすく、軽くて水をはじき、酸やアルカリなどの薬品にも強く、丈夫なうえに安い。多くの長所をもっているため、重宝されている。

 でも、水や薬品に強いという長所は、裏を返せば大きな短所にもなる。木材や紙、木綿などの天然素材は時間がたつと微生物によって「二酸化炭素」や「水」など、小さな「分子」に分解される。ところがプラスチックは、波の力や日光に含まれる紫外線によって細かく砕けても、長い間分解されない。5ミリ以下に砕けたものは「マイクロプラスチック」と呼ばれ、世界で大きな問題となっている。

健康被害の可能性も?マイクロプラスチック問題とは気象庁が日本から1千キロ離れた太平洋上で採取した「マイクロプラスチック」

 道端に捨てられたペットボトルやレジ袋などは、雨に流されて川に入り、河口や海岸で破片になり、やがて海に流れ出ていく。そして今、世界中の海にマイクロプラスチックが漂っている。海を生活の場とする海鳥や、クジラなどのほ乳類、ウミガメ、魚介類などのいきものは、エサと一緒に、あるいはエサと間違えてマイクロプラスチックを食べてしまう。

 北海道大学の研究チームによると、北太平洋で捕獲した124羽の海鳥ハシボソミズナギドリのおよそ9割の胃からマイクロプラスチックが見つかったという。また、東京農工大学の高田秀重教授の研究チームが2015年、東京湾で取ったカタクチイワシ64匹の胃や腸の中を調べたところ、約4分の3にあたる49匹から計150個のマイクロプラスチックが見つかった。