震災で考えた「本当に役に立つ人」
過去の成功体験は邪魔になることも
いまだ多くの方が大震災で厳しい状況にあるなか、不謹慎かもしれないが、ぜひ書かせていただきたいことがある。
今回の大震災の発生以降、はっきりわかったことがある。それは、社会のためになる人と、ためにならない人がいることだ。具体的には、混乱の中で、一生懸命被災者や社会のために働いている人と、自分のことしか眼中にない人がいる。
福島の原子力発電所で発生した被害は甚大で、放っておくと、さらに多くの人に被害が広がる可能性が高いという。それを防ぐために、東京電力や関係企業の従業員、自衛隊や消防庁などの人々は、文字通り命がけの作業をしている。
また、宮城県や岩手県などの被災地では、それこそ寝食を忘れて、被災者の救援活動を行なっている人たちがいる。「災害を見て、いてもたってもいられず、ボランティアにやってきた」という人たちは、被災地で多くの人々を助けている。
さらに、駅の構内で自発的に“節電”を呼びかけている若者もいる。彼らは、いずれも日本の社会のために「何か」をしている。
その一方、東京電力の経営陣は、震災発生の直後から海水注入の決断など、適切な初動対策を打ち出せなかったばかりか、いまだに福島原子力発電所の今後の処置について、はっきりした態度を示すことができない。
また、プロ野球関係者の中には、電力事情が悪化して計画停電の実施を余儀なくされても、3月29日の開幕に固執し続けた人たちがいた。
今は、1人でも多くの人命を助けるために時間を使うべきで、誰かの責任や不手際を追及するために時間を使うべきではない。しかし、今誰がどのようなことを主張し、何をしようとしているか、私はしっかり覚えておきたい。
現在、我々の目の前で起きていることは、間違いなく未曽有の自然災害だ。実際、過去に経験したことのないことが発生しているのである。