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日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?
【第7回】 2017年2月13日
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村上尚己

ノーベル賞経済学者も認めた「日本の消費増税」のデタラメな失策ぶり
「野菜高騰で景気停滞」などというトンデモ議論にだまされてはいけない!

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この1月末にノーベル賞経済学者で米プリンストン大学教授のシムズ教授が来日し、「日本の消費増税は失策だった」という趣旨の発言をしたことが話題になった。世の中の人は、この消費増税がどれほどひどい政策判断ミスだったかということをわかっていない。

「そこには日本の経済メディアの歪曲報道がある」―外資系金融マーケット・ストラテジストの村上尚己氏はそう語る。日本の経済メディアの問題を徹底的に批判した最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』から一部をご紹介しよう。

メディアが伝えない、
「消費増税」のマイナス影響

正常な経済運営には、中央銀行や政府によるマーケットとの適切なコミュニケーションが欠かせない。市場とのコミュニケーションという点で、大失敗だったのは、2014年4月に行われた5%→8%の消費増税だろう。これはアベノミクス史上最悪の大失策だったと言っていい。

2011年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大のクリストファー・シムズ教授がこの1月末に来日し、「財政再建のために必要だとしても、日本は物価目標を達成する前に、消費税率引き上げのような財政緊縮策は取るべきでなかった」「消費増税がなければ、アベノミクスはもっとうまくいっていた」と述べた。そこで今回は、この消費増税をめぐる通説について見ていくことにしたい。

[通説]「消費増税はやむを得ず。経済不調は天候不順のせい」

政府および財務省は、日本の財政赤字や公的債務残高、社会保障制度などが深刻な状況にあることを伝え、「この増税は不可避である」と盛んに宣伝していた。マスコミもそれに同調する報道をしていたが、いずれにしろ、この緊縮的な財政政策のリスクが軽視されていたのは明らかだ。増税後、日本経済の落ち込みはきわめて大きかった。

当時、アベノミクスがようやく軌道に乗り、賃金上昇率がわずかにプラスに転じたところだったが、その段階で消費税率を3%ポイントも引き上げれば、インフレ分を調整した実質賃金は2%以上落ち込む。消費に回せる所得がそれだけ減れば、個人消費が相当落ち込むのは当たり前である。

個人消費とは、日本人が国内で使う(消費する)お金の総額のことだ。下図を見れば明らかだが、東日本大震災の後遺症が和らいだ2012年から個人消費は回復し、そしてアベノミクスがはじまった2013年にはさらなる伸びを見せていた。しかし、増税のあった直後、2014年7~9月の個人消費は急減している。落ち込んだ数字はその後も戻らず、2014年後半からの伸びは、2012~13年のそれと比べても大きく見劣りしていた。

個人消費の推移

実施前には「増税による経済へのマイナス影響は一時的なものに過ぎないだろう。経済成長率の落ち込みも軽微だろう」という触れ込みがメディアを駆け巡っていた。しかし、そんな見通しに根拠がないことは、私も含めた多くの海外投資家たちは織り込み済みだったし、実際そのとおりになったわけである。

しかも、新聞社などに至っては、消費増税の旗振りをする一方で、「新聞は生活必需品」などというわけのわからないロジックを持ち出して、自分たちには軽減税率の適用を求めるなどの、ひどい二枚舌ぶりを見せていた。本当に愚かしい話である。

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村上尚己(むらかみ・なおき)

アライアンス・バーンスタイン株式会社 マーケット・ストラテジスト
1971年生まれ、仙台市で育つ。1994年、東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアを歩みはじめる。
第一生命経済研究所、BNPパリバ証券を経て、2003年よりゴールドマン・サックス証券シニア・エコノミスト。2008年よりマネックス証券チーフ・エコノミストとして活躍したのち、2014年より現職。独自の計量モデルを駆使した経済予測分析に基づき、投資家の視点で財政金融政策・金融市場の分析を行っている。
著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』(KADOKAWA)、『「円安大転換」後の日本経済』(光文社新書)などがあるほか、共著に『アベノミクスは進化する―金融岩石理論を問う』(原田泰・片岡剛士・吉松崇[編著]、中央経済社)がある。また、東洋経済オンラインにて「インフレが日本を救う」を連載中。


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