それにつけても「100億円」である。ソフトバンク社長の孫正義氏が東日本大震災の被害者支援のために、個人で100億円を寄付することを明らかにした。さらに今年度から引退するまでの毎年の役員報酬(2009年度実績は約1億800万円)も全額寄付するという。

 これまでにも「楽天」の三木谷浩史社長や、「ユニクロ」事業を展開する「ファーストリテイリング」の柳井正会長が、いずれも個人として10億円を寄付することを明らかにしている。いずれも大きな話題になったが、やはり「個人で100億円」のインパクトは大きい。日本の寄付文化を根底から変えてしまうのではないか、そう思わせるほどの衝撃を与えた。自分で財団を作るとか、土地を寄進するのではなく、100億円ものお金を他者に寄付するというのは、日本ではおそらく初めてのことではないかと思う。最大規模の個人寄付であることは間違いない。

孫正義氏が
日本の社会貢献の形を変えた?

 今回の震災被害者支援で特徴的なのは、その寄付額の「大きさ」。そして、誰もが競うように寄付をする、その「熱情」である。ビジネス、スポーツ、芸能などさまざまな分野のリーダー的存在の人たちは軒並み、これまででは考えられなかったような金額の寄付を表明している。

 野球界ではイチローの1億円を筆頭に、松坂大輔8000万円、ダルビッシュ有5000万円など。芸能界では、AKB48の5億円、宇多田ヒカルの8000万円、安室奈美恵の5000万円、浜崎あゆみの3500万円など。マスコミ界では久米宏の2億円。海外からも、クリント・イーストウッドとサンドラ・ブロックがそれぞれ8000万円(100万ドル)。ペ・ヨンジュンは7300万円。イ・ビョンホンは5000万円である。

 社会貢献やチャリティとは縁遠いイメージのあったホリエモンも「チームたかぽん」を結成。個人がファンドレイジングできる寄付サイト「Just Giving Japan」で寄付を募り、自身の約6000万を含む、チーム合計約7000万円の寄付を集めている(4月4日現在)。

 チャリティが仕事の一部と化しているハリウッド・スターや韓流スターはともかく、日本のスポーツ、芸能スターまでが、これまでにない多額の寄付をこぞってしている。誤解を恐れずに言えば、いまの日本は未曾有のチャリティ・ブームなのである。

 一般の生活者も寄付に熱心だ。筆者の周りには被災者支援のための募金活動をしている若者が多数いるが、3日間の街頭募金で100万円を集めたなどという話は毎日のように聞いている。

 阪神淡路大震災が起きた1995年は、後に「ボランティア元年」と呼ばれるようになったが、2011年は後に「チャリティ元年」と呼ばれるようになるだろう。そんな状況の中での、孫正義氏の100億円寄付の話である。この寄付について、日本ファンドレイジング協会常務理事の鵜尾雅隆氏はこう語る。