経営×経理

河江 決算数字を分析し、経営者に報告するまでの過程で、クラウド会計が大いに役立つということですね。

会社の数字を扱うだけの経理部は生き残れない

武田 はい。そして次の段階、数字から得られる付加価値ある情報を提供する「製造業」になるには、「経理部の人材」が重要です。決算数字を的確に分析し、将来の経営に役立つ情報に変換して提供し、経営者の「アクセル」や「ブレーキ」としての役割を果たせる高い能力や経験をもつ人材は、上場企業でもあまりいません。外部から招くにしても、経理部の採用はものすごく難しくなっています。私のところにも「いい人がいたら紹介してください」という依頼がよくありますが、賃金面での条件が全く合わない。

河江 そういえば、「月25万円くらいで良い経理の人材はいないか」といった問い合わせを受けることがありますね。一昔前の水準かな?と感じながらお話を伺いますが。

武田 今は、月40万円でも難しいでしょう。経理ができる、というだけでバリューが出ていて、会計人材のインフレが起きています。さらに、中小企業では、派遣社員がやれる仕事まで経理部長が抱え込んで多忙を極めている、というケースが少なくありません。経理業務が属人化しているのです。

「経理業務がなくなる」ではなく
「経理にしかできない仕事」に集中する

河江 作業ではなく、提案するための時間を作るには、属人化を防ぐ必要がありますね。前段階と同じで、クラウド会計が活用できます。

武田 経理のなり手が減っているため、少人数で経理部を回さなければいけない。しかも属人化を排除しなければいけない。そこにクラウド会計が登場したのはドンピシャのタイミングでした。ニーズと供給が完全にマッチしている。クラウド会計を活用すれば、決算までの記帳はもちろん、給与計算、経費精算といった、ベルトコンベアの上流も自動化されます。たとえば、これまで経理部員5人がかりでやっていた仕事を、ほぼ自動化できるケースも少なくありません。

河江 経理業務の担い手が減っている中で、「情報の倉庫業」にリソースを割くのはもったいないと。

武田 その通りです。クラウド会計は、とかく「経理の仕事がなくなる」とか「会計事務所の仕事がなくなる」という悲観論で語られがちですが、それは必然の流れであって、経営者は、経理業務の生産性を高めて付加価値が高い業務に注力できるというプラスの要素に注目すべきなのです。経営者目線で言えば、価値を生まない記帳業務などに月に何百万円もの固定費を費やしていたものが、月に数千円程度の費用で、全部自動化できるのですから。

Special Columns

土井貴達 どい たかみち

1973年生まれ。関西大学商学部卒。公認会計士・税理士。 土井公認会計士・税理士事務所代表。2012年に大手監査法人金融部を退所し、独立。 監査法人勤務時代に実施していた取引先企業への貸付金、有価証券の査定業務に係る監査、 コンサルティング業務などを通じてあらゆる業種に精通。 独立後も、企業融資のサポートを得意としている。 独立直後からクラウド会計の導入を始め、クライアント企業への導入サポートは数十社に及ぶ。

米津良治 よねづ りょうじ

1983年生まれ。上智大学法学部卒。税理士。税理士法人ファーサイト・パートナー。上場企業にてIR職、経理職等を経て現職。企業勤務時代に社内横断の業務プロセス改善プロジェクトの中心メンバーとして活動したことをきっかけに、業務効率化にこだわりを持つ。早くからクラウド会計の優位性に着目し、研究を開始。わずか1年で30社以上のクライアントにクラウド会計を導入した実績を持つ。

河江健史 かわえ けんじ

1979年生まれ。早稲田大学商学部卒。公認会計士。河江健史会計事務所代表、FYI株式会社代表取締役。 監査法人、証券取引等監視委員会等での勤務を経て現職。 「クラウド会計は人材不足に悩む中小企業の救世主」という思いのもと、クライアントへの導入を進める。 主な共著に『リスクマネジメントとしての内部通報制度:通報窓口担当者のための実務Q&A』(税務経理協会)、 『国税庁「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組み」徹底対応 税務コンプライアンスの実務』(清文社)、 『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)などがある。


「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?

2012年頃に登場し、わずか5年で100万社以上の企業が導入している「クラウド会計」。GmailやDropboxがあたりまえのようにビジネスの現場に普及しているように、今後、会計・請求・給与・経費精算などのバックオフィス系だけでなく、 顧客管理や在庫管理などあらゆる経営リソースがクラウド化していくことは間違いないと見られている。本連載では、クラウド会計をどう活用するか、企業の事例を中心に『会計事務所と会社の経理がクラウド会計を使いこなす本』(ダイヤモンド社)の著者の3人の税理士がインタビュアーとなって紹介する。

「「クラウド会計」は経営の生産性をどれだけ上げるのか?」

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