部下の意欲を高めるマネジャーは、日常の行動において何が違うのか。大規模な意欲調査とアナリティクスによって、優れたマネジャーの行動特性が定量的に示された。


 マネジャーという存在は、実に多くを左右する。たとえばギャラップの調査によると、従業員エンゲージメント(仕事への意欲)の少なくとも70%は、上司が誰かによって決まるという。この結果には困惑させられる。なぜなら同じ調査で、マネジメント職にある人の約70%はその適性を備えていないことが明らかになったからだ。この事態は、従業員の労働意欲と生活の質を損ねているだけでなく、企業の業績にも悪影響を及ぼしている。

 ほとんどの企業は、有能なマネジャーを持つことの重要性を理解している。しかし、彼らを有能にするための教育に十分な投資をしている企業はわずかである。その理由の1つは、「優れたマネジメント」とは実際にどんなものかを測定し、定量化することが難しいからだ。

 優れたマネジャーの定性的な特性については、数々の素晴らしい研究から明らかにされてきた。信頼を築く、強みに集中する、責任感を植え付ける、政治的な動きをしない、等々だ。だが、こうした特性からは多く伝わってこないのが、優れたマネジャーが毎日をどう過ごしているのか、日々のどんな行動ゆえに優秀なのかという点である。

 そこで、役に立ちそうな新しいデータがある。マイクロソフトのワークプレイス・アナリティクスを使えば、従業員の非特定化された何百万ものメールや会議のやり取りについて、デジタルの履歴のメタデータを解析できる。そこから、組織全体における客観的かつきめ細かな行動KPIを生成できるのだ。

 たとえば、マネジャーは部下との1対1のやり取りにどれくらいの時間を割いているか、直属の部下からのメールにどれほど迅速に返信しているか、人的ネットワークはどのくらい広くて多様性に富んでいるか、などである。これらのKPIを他のデータセットと組み合わせれば、特定の母集団のどんな行動が他と違うのかを理解できる。

 我々は最近、フォーチュン100に名を連ね数千人の知識労働者を抱える2社について、従業員エンゲージメントの調査結果を行動KPIと組み合わせた。マネジャーが従業員エンゲージメントに大きな影響を及ぼす、というギャラップの調査結果に触発された我々は、次の点を解き明かそうとした。意欲の高い従業員を抱えるマネジャーは日常の行動において、そうでないマネジャーと何が違うのか、である。

 そこからは、明快な結果を得ることができた。