義手に「萌え」は
「ありがたいこと」

 そんなある日、転機が訪れる。たまたまネットを見ていて、身体が“欠損”した女性たちがモデルを務め、それに萌える“欠損フェチ”や“義手フェチ”という“趣味の方”がいることを偶然知る。

「そんな世界があるんだな、と驚きました。私の欠損や義手が“萌え”ポイントだなんて、『いいのかな、そんなに都合のいい話、ある?』と思いましたね」

 知り合いのツテでファンが集うイベントに足を踏み入れると、「その手に萌えていいですか?」と“義手フェチ”から面と向かって聞かれることもあったが、琴音さんは「ありがたいこと」と感慨深げに言う。

「そもそも欠損や義肢の人口って、そんなに多いわけじゃないですから、その少ない中で見てもらえて、ファンになっていただけることは嬉しいです。『好きでいてくれてありがとう』という気持ちが大きいです」

 意識せずとも、徐々に“アイドル”の片鱗が生まれ始めていた。

 欠損・義手モデルとして活動する一方、もちろん仕事をしなくては生活できない。元々メイド喫茶に興味があったという琴音さんは、飲食店へ面接に行くのだが……。

「チェーン店系は断られることが多いですね。『見ての通り、右手は義手なんですけど、ヤル気はあります!働きたいんです!』と意気込んでも、『手がないって、どういうこと?』となり、受け入れてくれるところは少ないんです」

 そんな中、とあるテレアポ会社に採用されたときのこと。

「同じように面接で『右手がないんですけど』と言うと、『問題ありませんよ』と採用されました。でも、これが結構大変で。電話対応はヘッドセットをつけてやるので喋ることはできるんですけど、パソコンを打ったり調べ物をしたりを、全部片手でやらなきゃけない。『少々お待ちください』と言いつつ、心の中では『すっごい待たせちゃってるー!やばいー!』と、焦りっぱなしでした」