多くの地方都市同様、過疎化・少子高齢化が進むさぬき市。これといった名産品のない町で(残念ながら、うどんは香川県西部が本場)、全国に通用するような土産品の「まんじゅう」を開発する起死回生のプロジェクトが始まった。

 新しい土産品を開発するには、まず、誰が何を得意としているかを把握する必要がある。私はプロジェクトの皮切りとして、商工会員の菓子事業者たちに聞き取り調査を行なうことにした。

 和菓子屋という話を聞いていたのに、どの店もショートケーキやシュークリーム、はては駄菓子まで並べて売っていた。昭和の昔、全国どこの町にもあった「よろず菓子屋」といった風情である。

いまさら面倒、やるだけ無駄…当事者意識ゼロ。<br />「これが、地方の現実なんです」和菓子、洋菓子、駄菓子……どこにでもある商品を所狭しと並べた店内。

 地元の半径数キロの住民の、結婚式の引き菓子から来客時のお茶請けまで、あらゆるニーズを満たそうとすれば、そのような品揃えになってしまうのかもしれない。都市部の菓子店が競争の波にさらされ、専門店として洗練されていったのに対し、さぬきの店はどこも時が止まったようだった。

 しかし、今回の狙いは全国展開である。どの観光地にもありそうな土産菓子ではなく、さぬき市ならではの特徴があり、訪れた人々があえて手に入れたくなるようなものでなければならない。

 私が外部の専門家としてきることは、そんな土産品の開発に向けて、事業者の隠れた持ち味を引き出し、強みを磨き上げることである。しかし、聞き取り調査の結果は惨憺たるものだった。

 最初に訪問した和菓子店の店主は、こう言ってのけた。

「何社かのお菓子を詰め合わせて、土産物にすればええのと違うか?」

 私は耳を疑った。「どういうことですか?」