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野口悠紀雄 大震災後の日本経済
【第2回】 2011年5月20日
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

2.きわめて深刻な電力制約

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野口教授の緊急出版書『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)第1章の全文を6回にわたって順次掲載。大震災によって、経済問題の本質は「需要不足」から「供給制約」へと一変した。真の復興をとげるために、この問題をどう捉えるべきか。今回は供給制約の中でもとくに厳しい電力事情について論じる。

厳しい今年夏の電力事情

 供給制約の中で最も厳しいのは、電力制約である。

 電力は蓄えることができないので、重要なのはピーク時の対応である。ピーク需要は、季節的には、冷房用電力使用が増える7、8月頃だ。1日の中では、夏には10時から18時頃までと、かなり長い時間帯になる。この需要に対応する必要があるのだが、今年の夏には、かなり深刻な事態に陥る可能性が高い。

 今年3月に行なわれた計画停電によって、東京電力管内の人々は、電力制約がいかに厳しいかを思い知らされた。今後の電力制約がどの程度のものかについて、以下に推計を試みよう。

 東電管内で、発電設備は今後復旧されるだろう。3月25日の東京電力の発表によれば、今後の火力発電所の復旧により、夏の供給力は4650万kW程度にできるようだ。他方で、今夏の最大需要は、地震の影響や節電の効果が見込まれることから、昨年に比べて約500万kW減少し、5500万kW程度であるとしている。

 しかし、この需要予測は楽観的ではないかと考えられる。そこでここでは安全をとって、最大需要は昨年と同じ6000万kWだとする。すると、必要な削減率は22.5%となる。以下では、計算の簡単化のため、25%とすることにしよう。つまり、東電管内の夏の需要を約4分の1カットする必要があるのだ(*1)

 削減は7、8月のみでは済まず、12月以降も10%程度の削減が必要となる可能性が高い。すると、2011年度の年間電力使用量を7%程度削減する必要がある。他方で、09年度の特定規模需要(自由化の対象となる大規模需要)の販売電力量は、東京電力が1727億kWh、東北電力が499億kWhであり、この合計は全国(5284億kWh)の42.1%だ(図表1-1を参照)。したがって、日本全体の企業の電力使用は約3%減少することになる。

 石油危機の際と違うのは、備蓄で対応できないことだ。そのため、ピーク時に必要とされる抑制が、経済活動を一般的に抑制するのである。

(*1)東京電力は、4月15日、夏の供給力を5070万~5200万kW程度へと上方修正した。これを受けて政府は21日に、大口需要家の削減目標を25%減から15%減に引き下げた。供給力増強が実現できれば、以下で述べる供給制約も6割程度に緩和される。ただし、夏に供給不足になる事実、年間を通じて供給力に限界がある事実に変わりはない。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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