スマートエイジングライフ
医師が教える!男性のための「心と体のアンチエイジング」
【第9回】 2017年4月5日
阿保義久 [北青山Dクリニック院長]
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「腸内細菌」は肥満、動脈硬化、がんの毒にも薬にもなる

 適切な消化吸収と排泄には腸内細菌の手助けが必要不可欠です。腸に入って来た食べ物を吸収しやすくなるように分解してくれるのが腸内細菌ですし、便を形成して排泄を促すのにも腸内細菌が役立っています。

 病原体の多くは腸から体内に吸収されますが、腸内細菌は自らの生息場所を奪われないように外から侵入してくる細菌を攻撃して病原体を排除します。さらに、腸内細菌は腸の免疫細胞を活性化させるので、免疫力を高めるには腸内細菌を増やすことが大切ということもわかっています。このように、腸内細菌(腸内フローラ)は消化・吸収・排泄・免疫の点で多大な役割を担っているのです。

 しかも、腸の活動とは一見離れているように思われる、肥満体質、動脈硬化、がん、脳の発達にも関連がありそうだということがわかってきました。順にご説明します。

肥満体質の原因は
「腸内フローラの乱れ」かもしれない

 国際的に権威ある科学雑誌「サイエンス」に「腸内フローラの乱れが肥満体質の原因になる」という衝撃的な研究結果が発表されてから、腸内フローラへの注目が加速したと言っても言い過ぎではないでしょう。

 俗に言う「肥満体質」は、腸内フローラに起因している可能性があります。というのも、脂肪の蓄積を抑え、その消費を増やす、「短鎖脂肪酸」を作る腸内細菌が多ければ多いほど太りにくく、肥満体質の人の腸内細菌にはこの短鎖脂肪酸を作る細菌が極端に少ないことがわかったのです。

 短鎖脂肪酸の代表格は酢酸、すなわち「お酢」ですが、てっとり早くお酢をたくさん飲めば痩せるというわけではありません。口から入る酢酸は間もなく分解されてしまうので痩身効果は一時的です。では、四六時中にわたって酢を飲み続ければよいのかというと、それでは歯が酸に腐食されてしまいます。お酢をなんとかして経口で取り入れる代わりに、腸内細菌が役立ちます。短鎖脂肪酸を作る腸内細菌は、腸内に食べ物がある限りそれを分解して短鎖脂肪酸を体に供給し続けてくれるので、このような腸内細菌を育むことができれば実際に痩せることができるようです。
 
 ところで、肥満傾向の腸内フローラの人は、もう痩せる体質を手に入れることはできないのでしょうか。

 答えはノーです。短鎖脂肪酸を作る細菌の好物は「食物繊維」です。人間は食物繊維を消化できませんが、短鎖脂肪酸を作る細菌はこれを食べて短鎖脂肪酸の原料にしています。だからこそ野菜をたくさん食べて食物繊維を取れば痩せるフローラに変えられる可能性があります。

阿保義久
[北青山Dクリニック院長]

東京大学医学部卒業。腫瘍外科・血管外科医。2000年に北青山Dクリニックを設立。下肢静脈瘤の日帰り根治手術椎間板ヘルニアのレーザー治療痛みのない内視鏡検査・進行がんに対する革新的治療―がん遺伝子治療まで、質の高い医療サービスの提供に励んでいる。著書に『アンチ・エイジング革命(講談社)』、『下肢静脈瘤が消えていく食事(マキノ出版)』、『尊厳あるがん治療(医学舎)』などがある。


医師が教える!男性のための「心と体のアンチエイジング」

「アンチエイジング」とは美容医療だけを指すのではなく、心臓血管、脳、消化管、骨・関節など、全身に関わり、身体年齢の老いを遅らせることが目的です。40代から意識すると効果的で、その対象は40~65歳位の方になります。本連載では、アンチエイジングの概念や体の部位ごとの変化を紹介し、ケア方法を提案していきます。

「医師が教える!男性のための「心と体のアンチエイジング」」

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