万が一、お金の代わりに土地や建物の権利を姉に渡してしまえば、姉は所有権を盾に実家へ立てこもるでしょう。実家から追い出すことは、ますます難しくなるので絶対に避けなければなりません。

相続の手続が完了する「前」に
姉を実家から追い出すには

 健さんは、親戚を交えて姉と話し合おうとしましたが、親戚もキレやすい性格の姉を厄介者扱いし、なかなか協力を得ることはできませんでした。八方塞がりになった健さんが私のところに相談に来たのは検認が終わってから約1年後のことでした。

 まず最初に考えたのは、実家の権利を持っていない姉が今まで実家に住み続け、そして今後も住み続けようしているのは「当たり前のこと」なのかどうかです。

 誰がどの遺産を受け取るのか…もし相続の手続きが完了するまでの間、姉が無償で居座り続けることが許されるのなら、姉はどんな行動をとるでしょうか?健さんの話を無視し、わがままを言い続け、わざと相続手続きを遅らせて「時間稼ぎ」を企むに決まっています。相続の手続が完了する「前」に姉を追い出すにはどうしたらいいのでしょうか?

 相続手続きが完了するまでの間、所有権を有していない相続人(姉)が無償で実家に居住し続けるための条件は、過去の裁判例(平成8年12月17日、最高裁判決)によると、今回の場合お父さんが「亡くなった後も住み続けてもいい」と認めていた場合、もしくは認めていたと推測される場合に限られます。

 健さんは「『直美(姉)には出て行ってほしい。お前(健さん)が来てくれれば』と父は確かにそう言っていました」と言います。今回の場合、上記の条件(故人が「住み続けてほしい」と言っていた)を満たしていないのは明らかです。