>>(上)より続く
――シーン1は『不注意』、2は『多動性』、3は『衝動性』にフォーカスした事例ですが、どこにでもいる人にも思えます。
そうですね、すごく身近だと思います。日本人の子どもを対象にした調査では、全体の5%がADHD脳でした。小さな頃は、ものすごくおしゃべりだったり、ちょこちょこ動き回ってものすごく落ち着きのない子どもっていますよね。
大人になると、だいたい3分の1はよくなり、3分の1は表だっては判らなくなる。いわゆる『片づけられない症候群』で、外ではなんとかなっているものの家に帰るとゴミの山で、人知れず悩んでいるといった程度に改善し、残りの3分の1は大人になっても改善しないで周囲を困らせていると言われています
――脳に原因があるとしても、病気ではないのですか?
病気ではなく、発達がゆっくりしている、あるいは『脳の癖』と考えてください。子どもの場合だと、ADHD脳の子は、実年齢×3分の2ぐらいといわれています。
関係しているのは、脳の『前頭前野』と『側坐核』という領域です。ここは感情のコントロールタワーみたいな場所なのですが、ADHD脳の人は、ここで働くべきドーパミンなどの神経伝達物質が上手く働かないため、特徴的な症状が出てしまうと考えられています。単調な仕事が苦手で。ワクワクするような仕事を追い求めるなどの傾向があります
――育て方も影響していますか?
影響しますね。片付けが苦手な家庭で場当たり的に育てられると、お子さんが片づけられない大人になっても不思議ではありません。成長過程でのしつけや、社会でのトレーニングによって、改善される可能性は多々あります。ただし、トレーニングにもコツがあります。
ADHD脳の人は、日常において、さまざまな『困り感』を持っています。学校や職場で『ダメな人』と思われて過小評価されていたり、自信を失い、能力を十分に発揮できなかったり、叱られて委縮して、ますますできなくなっていく悪循環に陥り、うつ状態になっている人がたくさんいます。その一方で、必要なしつけやトレーニングがなされないまま、社会に出てきてしまう人も結構いますね