経営×総務
社員の能力を100%引き出す 食事マネジメント
【第11回】 2017年4月25日
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笠井奈津子 [栄養士、食事カウンセラー]

「産業医は相談しづらい」社員の声に総務はどう応えるべきか

産業医面談で不調を相談しても、「具体的に生活習慣のどこを変えたらいいのか分からない」という経験はありませんか?

産業医はあまり栄養のことを知らない?
診断に必要な情報・課題の共有が肝心

 総務・人事の人と社員の健康管理について話していると、「保健師や栄養士には相談しやすいけれど、産業医には話しにくい…」と思われている印象を受けることがあります。また、社員から産業医との面談の希望が少ない時などは、「産業医が期待しているように機能していない」、「もっと良い産業医がいるのではないか」と思われていることも少なくないようです。

 しかし、産業医の良し悪しを判断する前に、総務・人事として、社員がいいサポートを受けるために必要な情報や課題を産業医と充分に共有できているでしょうか。漠然と「社員を健康にして会社を良くしたいんですけど、どうしたらいいですか?」と聞かれるよりも、具体的な希望を教えてもらったほうが適切な指導ができます。医療も栄養相談も同じです。

 例えば、新しく着任した産業医に「メタボの社員が多い」ことを伝える際にも、どの部署に多い、理由はなにが考えられる、という情報があるのとないのとでは、アドバイスのしやすさが大きく違います。会社全体としての改善策はもちろん、個人面談の際の掘り下げ度合にも影響してきます。職場巡視する際にも、事前情報があるほどに視点は多くなるものです。

 また、「何かあっても産業医がいるから大丈夫」と安心している場合でも注意が必要なことがあります。産業医を設置することは会社としての義務は果たしていますが、何をもって「大丈夫」というかは難しいからです。

 先日、企業での食事相談をしていた際に「体重を落としたい」と希望する人が、「実は、産業医からも体重を落として血圧を下げないと、人工透析を始めるのも遠くないって言われているんです」とおっしゃるので、医師からのアドバイスの内容を聞いてみると「運動をして、ラーメンをやめろと言われました」とのことでした。

 アドバイスは間違っているものではありませんし、産業医がいるような社員数の多い企業での面談時間は限られています。

 しかし、身長170cmで100kgを超えている人にいきなり「運動しろ」というのは難しい話ですよね。そもそも、平日は毎日深夜まで職場いるとしたら、運動する時間なんてとれません。

 産業医との面談の場合、栄養士と違って話す内容がメンタルヘルスについてなど多岐に及ぶでしょうから、食事面について話す時間は本当に限られてしまいます。

 だからこそ、総務・人事が産業医に対して「部署ごとの働き方や課題」などを事前にシェアしておくことで、非現実的なアドバイスに陥らないようにし、貴重な面談時間を有効に使うことにつながります。

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笠井奈津子 [栄養士、食事カウンセラー]

東京都生まれ。聖心女子大学文学部哲学科を卒業後、栄養士免許取得。現在、栄養士、食事カウンセラー、フードアナリストとして活躍中。都内心療内科クリニック併設の研究所での食事カウンセリングやセミナーなどで、これまでに携わった8000通り以上の食事記録をもとに食事指導を行っている。また、“食卓に笑顔を”の願いのもと、『Smile table』を主宰し、ビジネスマン向けに企業内研修、カウンセリングをするほか、ワークショップなども実施している。最新の情報などはこちらへ。
著書には『甘い物は脳に悪い』『成功する人は生姜焼き定食が好きだ』がある。
文化放送「オトナカレッジ・健康学科」に隔週木曜日出演中。詳しくはこちらから→オトナカレッジHP
ポッドキャスト「オトナカレッジ・聴く図書館」でも聴けます。番組紹介動画はこちら

 


社員の能力を100%引き出す 食事マネジメント

かつて社員の病気や体調不良は、自己責任というイメージが強くありました。しかし今、社員の健康上の問題は、会社の経営・業績に大きな影響を及ぼしかねません。この連載では、職種などで異なる「特有な働き方の問題点」、それに伴う「食事の問題点」を紐解きながら、人事・総務部はどのように対処すれば改善すべきか、栄養士の目線から解説します。

「社員の能力を100%引き出す 食事マネジメント」

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