しかし、逃げても後日に逮捕されたりしたら警察官や裁判官の心証は最悪で、たとえ本当に無実だったとしても言い訳は通らないだろう。痴漢を疑われたらすぐに弁護士を呼べとも言うが、過去の痴漢冤罪事件を見ても、弁護士がどこまで無罪主張に役立つかは疑問だし、自分を100%信じてくれる妻や友人たちがいて、長期の法廷闘争を戦い抜くだけの気力と財力があって、己の全存在をかけて戦うくらいの矜持がなければ、痴漢冤罪事件で戦うことは困難だ。たとえ最終的に無罪判決を勝ち取っても、それまでに払った代償があまりにも大きい。

 結局のところ、男性諸君は極力、痴漢を疑われないように注意して生きていくしかないが、残念ながら、痴漢冤罪は注意していても防げないこともある。本当に、どこにでも痴漢冤罪の危険は存在しているのだ。実は僕も一度、痴漢だと疑われたことがある。まだ学生だった頃だが、ある日、満員電車に乗っていた僕の目の前には、20代半ばくらいと思われるお姉さんが背中を向けて立っていた。当時は僕も若造だったし、痴漢冤罪の報道もなかった時代なので、無防備にもお姉さんのほうに体を向けて立っていたのだが(今なら絶対にそのような体勢はとらないが)、電車がカーブで揺れた瞬間に、僕とお姉さんの身体が密着してしまった。するとその女性はもの凄い形相で振り向いて、僕を睨みつけてきた。電車が揺れたのをいいことに、股間をお尻に押しつけてきたと思ったのだろう。もちろん濡れ衣だ。

 幸いこの時はお姉さんに睨まれただけで済んだが、最近は「新型痴漢」といって、お尻や太ももを触るのではなく、電車の揺れを利用して身体を密着させたり、首筋に息を吹きかけたりするような痴漢行為が増えていると報道されている。なので、僕のケースも今なら「新型痴漢」認定されて、学生なのに前科持ちになってしまっていたかもしれない。

名門女子高生たちによる
巧妙な「痴漢冤罪詐欺」の実態

 このように、自分ではそのつもりがなくても痴漢犯罪者になってしまうこともあるが、もっと悪質なケースもある。痴漢冤罪をでっち上げて、金品を脅し取る「痴漢冤罪詐欺」だ。これはタチが悪いが、とくに最悪なのが、女子高生の痴漢詐欺グループである。世の中には以前から、痴漢冤罪を仕掛けて詐欺をはたらく女子高生グループが存在している。もう20年くらい前の話になるが、僕は当時担当していた若者向け雑誌の取材を通して、そうした痴漢詐欺グループの女の子たちから直接話を聞いたことがある。その手口はこうだ。

 まず、朝の満員電車でターゲットとなる男性を決める。いかにも実直そうな、一流会社に勤める妻子持ち風の中年男性がターゲットだ。そのターゲットの前方に、被害者役の女子高生が移動する。頃合いを見計らって、被害者役の子が身体をモジモジさせたり、泣き出したりする。するとターゲットを取り囲んでいた他の女子高生たちが「あんた、なにやってんのよ!」と言って男性を問い詰め、次の駅で降ろす。最初にやることは、まず名刺の確保だ。これで男性が勤務する会社と連絡先を確保する。そこから交渉に入り、男性が金を払えば無罪釈放。払うことを拒否すれば駅員を呼ばれ、駅員室へ。まもなく警察官も到着する。