累積100億円もの赤字事業を黒字化し、再び国内トップクラスのオンライン動画サービスの地位に返り咲かせた株式会社GyaO代表取締役社長・川邊健太郎氏。自信を失いかけていた組織を、活力に満ちた強い組織へ変貌させた秘訣、個々の力を最大化する人の活かし方とは?そして30代前半で社長に抜擢された川邊氏の成功の契機となった「リーバイス作戦」とは?川邊氏の素顔に迫る。

100億の赤字を2年で黒字にした
組織づくりの秘訣「フルスイング賞」

累積100億円の赤字事業を2年で黒字化した<br />若手社長が語る「結果を出す人」の秘訣とは?<br />――GyaO社長・川邊健太郎氏【前編】かわべ・けんたろう
東京都渋谷区生まれ。1995年のインターネット黎明期より、起業家としてネットサービス事業に携わる。自らが設立した「PIM」において携帯インターネットの市場を開拓。2000年にヤフー株式会社と合併し、「ヤフー・モバイル」のプロデューサーに従事。2007年に「ヤフー・ニュース」のプロデューサーに。続いて2009年のヤフー株式会社によるGyaO買収を機に、株式会社GyaO代表取締役社長に就任。現在に至る。無料動画GyaO![ギャオ]

南 累積で100億円もの赤字事業を、2年間で黒字化に成功。右肩上がりの成長を遂げています。いったいどのような改革を行って、この快挙を成し遂げたのでしょうか?赤字の当時は、社員の方の士気は下がりがちだったのではないでしょうか。

川邊 達成感を共有することを一番大切にしました。ばかばかしいと思う小さなことでも、何事にも必ず目標を定めて、それを全力で達成し、達成したら「みんなでよくやったね」と言える環境を創ることです。

 たとえばプロジェクトが前倒しで達成できたら褒め讃えて、月一回の朝礼でも発表します。メールも頻繁に全員に送って、今、何が達成できて、どの地点にいて、これからどこを目指していくのかを伝え、これが達成できたのだから、もっとできると鼓舞していました。

南 ヤフーがUSENからGyaOの事業を買収し、GyaOはヤフーの子会社になりました。川邊さんはGyaOのトップに就任し成功されています。しかし、通常、M&Aの大半は失敗に終わると言われています。社内文化の構築が一番のネックになるといわれていますが、特に注力したことはありましたか?

川邊 とにかく、目標設定と達成感を喜び合える環境創りに注力しました。もともとの価値観が違う人が一緒にいる中で、ひとつの組織文化にしていくは大変でしたが、苦労しながら工夫を凝らしました。

 たとえば、弊社では四半期ごとに賞を出しているのですが、その賞を、ちょっと笑えるものにしています。ひとつに「貢献した賞」がありますが、これは普通。もうひとつは「フルスイング賞」です。どんな賞かというと、うまくいっても、いかなくてもいいので、とにかくフルスイングした人を讃える賞なのです。