「言い逃れ」が最悪の事態を招く

 数日後、問題の男性と、たまたまクラブの出口ではち合わせしました。
 そこで、彼を呼び止めて、私が抗議を受けたことを話し、「これは危険な行為だし、ゴルフのルールとして絶対許されないことなので、問題になっています。迷惑をかけた方たちに謝罪してもらえませんか」と要請しました。

 しかし、彼は驚くべき反応をしました。
「貴様、自分が何様と思っているんだよ。何の権利があって、お前は俺にそんなことを言うんだ」と怒り出したのです。すんなり受け入れてくれるだろうと思っていたので、面食らいました。「何様だ?」と問われたので、「理事なので、あなたに注意しなければならない立場なんです」と説明すると、「理事だからなんだって言うんだ?」と捨て台詞を残して、そのまま立ち去ってしまいました。

 私は理事として、彼の態度に目をつむるわけにはいきません。マレーシアのゴルフ場は本場であるイギリスの精神にのっとって運営しているので、ジェントルマンシップを持ってプレイをしなくてはならない。ジェントルマンシップに反する人は、除名になったり、しばらく出入り禁止になるのが決まりだったのです。

 そこで、私は、翌日彼の勤める会社に出向き、社長に会って報告しました。
 社長はすぐに問題の男性を呼び、「お前、小西さんがこう言っているけど、本当はどうなんだ」と私の前で問いただしました。その男性は、「社長、なんでこの男にこんなこと言われる筋合いがあるんですか? 私はこの人のことを知らないんですよ」と反論。すると、社長は「私はそんなことは聞いていない。事実関係を聞いているんだ。お前は前の組に打ちこんだのか」と冷静に聞きました。

 それでも、その男性は「いや、私はそんなことをした覚えはない」などと言い逃れをしようとしました。言い逃れをすればするほど立場を悪くすることを知らなかったのでしょう。私は事前にその場にいたキャディーに確認をとり、その男性が打ちこんだところを見たという証言もとっていましたから、「あなたが打ちこんだという証人は大勢いるんですから、その事実からは逃げられませんよ」と言明しましたが、それでも認めようとはしませんでした。

 ついに社長さんは激高。「お前は今すぐ日本に帰れ!」と怒鳴りつけたのです。
「地域社会とよけいな摩擦を起こしてるやつを、ここには置いておけない。48時間以内に日本に帰れ!」