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アマデウスたち

矢萩多聞
インドが教えてくれた描く喜び

週刊ダイヤモンド編集部
【第23回】 2008年4月4日
著者・コラム紹介バックナンバー
矢萩多聞
写真 加藤昌人

 表紙カバーやページをデザインした本は、哲学書から映画本まで、100冊近い。著者が描いたテーマやドラマ、舞台となっている時代や場所、感覚や息づかいを想像し、そこに自分と「地続き」のなにかを見つけ、同時に、それが読者に手渡されていくことが連想できたとき、装丁はおもしろいと感じる。

 初めは、きれいに、売れそうにデザインすれば、それでいいと思っていた。だが、名編集者として知られた安原顕に出会い、余命1ヵ月の宣告を受けながら、むくんだ指では無理と定規を両手に握り、キーボードをたたいていた姿を目の当たりにして、変わった。「本は命さえ削って、まじめに作り上げるもの。そんな著者の激しい思いを、丸ごと受け止めなければならない」。

 中学1年生で、学校をやめた。授業は、日常の疑問に答えてくれない知識の強要だった。自分との断絶が、どうにも居心地悪かった。幼い頃から好きだった絵も、うまく描こうと意識し出すと、嫌いになった。8歳の頃から行き来したインドで、民族芸術のミティラー画に出会い、描くこと自体が楽しみであり、祈りであることを知った。解き放たれたようにペンを取り、細密画を描き始めた。14歳から毎年、個展を開いている。

 その絵は、子どもの落書きのように、どこまでも自由でおおらかだ。テーマもモチーフもないが、命の喜びがある。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)

矢萩多聞(Tamon Yahagi)●1980年生まれ。8歳から毎年、インドやネパールを旅する。中学1年生で学校をやめ、ペンによる細密画を描き始める。現在は1年の半分をインドで、残りを日本で暮らし、銀座・横浜・京都などで個展を開催しているほか、装丁などを手がける。著書に『インドまるごと多聞典』(春風社)。

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