ボディマス指数で評価すると、世界人口の5人に1人が肥満または過剰体重という(写真はイメージです)

 現在の人はかつてないほど太っている。体長を身長の二乗で割って算出されるボディマス指数での評価では、世界人口の5人に1人が肥満あるいは過剰体重となってしまうほどだ。

『人はなぜ太りやすいのか』
マイケル・L・パワ&ジェイ・シュルキン (著)、山本太郎 (訳)、みすず書房、400ページ、4200円(税別)

 1900年以前には肥満者は存在はしていたものの、多くはなかった。1700年代、1800年代のヨーロッパでは肥満者は珍奇なものであり、見世物にする人もいたぐらいだ。受け入れられ方も現在とは大きく異なっていた。平均体重より重いことは豊かさを意味し、病気の際に予備的な体力を有しているものと考えられていた。それが今では肥満は自己抑制の欠如の結果だと捉えられ、むしろ数々の病気を引き起こす悪い現象、不名誉な状態であると考えられている。

 それにしてもなぜ、わずか100年でそれ程の変化が起こってしまったのか。人はなぜこれほどまでに容易く太るようになってしまったのか。人の肥満に対する脆弱性はどこから来たのか。本書『人はなぜ太りやすいのか』は、そうした疑問を中心に置き、人がなぜ、どのように肥満になるのかを生物学を筆頭にし、包括的に理解しようとする一冊である。多くの人が悩んでいるであろう“どうすれば痩せられるのか”や、“どうすれば肥満を予防できるのか”といった問題に直接的な解答を与える内容ではないけれども、その根本原理を理解せずにダイエットを強行すると問題が多いものになるだろう。

人はなぜ太りやすいのか

 まずはシンプルに、概要として「肥満の増加はなぜ起こったのか?」を紹介するが、これは核心部分を引用してくれば次のようになる。『著者らの見解は、肥満の増加は、ヒトという種の適応的生物学的特性と現代という時代環境との間のミスマッチに起因するというものである。