インターネット上のコミュニティは「心あたたまる関係」を育む場になりうるが、その一方で、ヘタをすれば誹謗中傷が飛び交う荒廃した場ともなりかねない。いわゆる“炎上”のリスクだ。
とりわけ企業の担当者にとって、この炎上リスクは深刻な問題だ。いったん火がついてしまうと事態の収拾は容易ではなく、対処の仕方を間違えれば火に油を注ぐ結果になってしまう。こうした不安から、ソーシャルメディアを活用したコミュニティ作りに二の足を踏む企業も少なくない。
そこで今回のコラムでは、“炎上”を防ぐコミュニティ運営の仕方について考えていくことにしよう。ここで述べるいくつかのポイントを押さえれば、ガチガチの罰則規定を設けなくても居心地のよいコミュニティをつくれることがおわかりいただけるはずだ。
【第1回】「ソーシャルメディアは死んだ」と言われる日は近い…?」から読む
【第2回】「ソーシャルメディアとサクラの微妙な関係」から読む
【第3回】「「2ちゃんねる」は永遠に不滅?!」から読む
【第4回】「ソーシャルメディアが浮き彫りにする個人の孤独」から読む
【第5回】「ソーシャルメディアが無縁社会を生み出す?」から読む
【第6回】「ザッカーバーグに異議あり! フェイスブックが掲げる「実名主義」では社会は幸せになれない」から読む
【第7回】「企業のソーシャルメディア活用の天国と地獄」から読む
【第8回】「ソーシャルメディアはブランドの本質の映し鏡」から読む
オンライン上の喧嘩を防ぐには
罰則規定よりも「空気」のほうが効く
「消費者に自由な内容を投稿させて本当に大丈夫なのだろうか?」「どんなことを書かれるのか、誹謗中傷が多発するのではないか?」――このように心配する企業は多く存在します。
コミュニティ上に起こるトラブルは「荒れ」と表現されます。要するに、オンライン上の喧嘩です。このような「荒れ」を避けることは、私たちコミュニティ設計担当の重要な仕事のひとつです。
まず、私たちは企業コミュニティのシステムを登録制にして、投稿者を特定できるようにしました。そうすることで何かトラブルが発生した際は、その投稿者に対し規約で定められた対応をとることができます。
私たちは鉄壁の安全性を求め、問題が起こった場合は投稿された記事の削除や、投稿者を退会させるといった対処を可能にするシステムをつくりました。
しかし、せっかくのシステムではありましたが、このような手段が使用されるケースはまれでした。いざというときのための保険のようなもので、実際の現場で使われることはほとんどありませんでした。
牽制力は、罰則的な対処よりもコミュニティから生まれる「空気」によるもののほうが強いことがわかってきました。日ごろは自治に任せ、非常事態のときのみ警察が出動する。古今東西、村や街というのはこういった形をとるものなのかもしれません。